
経団連のクリエイティブエコノミー委員会(南場智子委員長、村松俊亮委員長)は7月29日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「コンテンツ産業のさらなる海外展開に向けて」を日本貿易振興機構(ジェトロ)と共催した。概要は次のとおり。
■ 基調講演「日本のIP(知的財産)・エンタメ産業輸出20兆円インパクトの可能性」(中山淳雄 Re entertainment社長)
中山氏は、日本のコンテンツ産業が自動車に次ぐ第2位の輸出産業へと成長している一方で、産業基盤が追い付いていないことが課題と指摘した。
ジェトロの海外展開支援は本格化し始めた段階であり、依然として韓国に後れを取っていると述べ、コンテンツ産業のさらなる成長に向けて、政府支援の強化が必要と訴えた。
■ ジェトロのコンテンツ支援と海外展開支援拠点
ジェトロは、経団連の提言等を受け、米国・ロサンゼルス、インド・ニューデリー、タイ・バンコク、フランス・パリ、韓国・ソウル、中国・上海、ブラジル・サンパウロの7事務所にコンテンツ産業の海外展開支援拠点を設置している。
同本部デジタルマーケティング部と共に、各地の駐在員が登壇した。各地域における日本コンテンツ展開の現状や課題、ジェトロが提供する支援内容について紹介した。
■ パネル討議「コンテンツ産業のさらなる海外展開に向けて」
バンダイナムコホールディングスの桃井信彦副社長は、各国における昔の「ガンダム」のリブートや「たまごっち」のリバイバルヒットの事例を通じて、コンテンツビジネスが世代を越えて人々をつなぐ力を持つことを改めて実感したと述べた。また、海外展開における模倣品対策の重要性と現状を紹介した。
ジェトロに対しては、コンテンツ産業は多層的、複合的であるとして、日本企業のみならず、海外パートナーを含めた日本コンテンツへの支援を要望した。
ソニー・ミュージックエンタテインメントの村田知樹海外事業推進グループ副本部長は、同社グループが手掛ける「鬼滅の刃」「国宝」「LiSA」「YOASOBI」などの作品・アーティストの海外展開の状況を紹介。加えて、今後の展望を示した。
近年、アジアなどでますます存在感を増している中国のゲームや韓国のK-POPなどに対しては、危機感を共有するとともに、エンターテインメント関連企業や他産業が一体となって、日本のコンテンツ産業振興に取り組む必要性を訴えた。
これらに対しジェトロは、ニューデリーとバンコクの事務所からの最新状況を共有した。インドではモディ首相のリーダーシップのもと、国を挙げてコンテンツ産業の振興が図られていること、バンコクでは、現地企業から、日本企業との協働に強い意欲が示されていることなどを紹介した。
同本部コンテンツ課は、各地のコンテンツ拠点の開設により、さまざまな現地ニーズが顕在化しつつあり、拠点機能の充実と、コンテンツ業界各社や経団連とのさらなる連携が必要との考えを示した。
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シンポジウム終了後は、登壇者と参加者によるネットワーキングが行われ、活発な情報交換の場となった。
【産業政策本部】