経団連(筒井義信会長)は8月29日、インドのナレンドラ・モディ首相の来日の機会を捉え、インド工業連盟(CII)と共に都内で、第12回日印ビジネス・リーダーズ・フォーラム(BLF)を開催した。日印BLFでは2007年以降、両国首相の相互訪問に合わせて両国のビジネスリーダーが一堂に会し、民間対話を深めてきた。

モディ首相(中央左)、石破首相(同右)~日印経済フォーラム
経団連からは筒井会長(日本側共同議長)をはじめ28人、CIIからはバラット・フォージ社のババ・カリヤニ会長(インド側共同議長)をはじめ13人が出席した。「貿易投資の促進」「経済安全保障の強化」「戦略分野における連携」――の三つのテーマを軸に活発な議論が行われた。
冒頭、筒井会長は、対立と分断が進む国際情勢を踏まえ、戦略的グローバルパートナーである日印の連携と協力の重要性に言及した。
そのうえで、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現と、国際経済秩序の維持・強化に向け、日印が連携して自由で開かれた貿易・投資環境の確保に努めることは、「Make in India for the World」にも資するものであることを強調した。
さらに、自由な経済活動と安全保障の両立を図る観点から、重要鉱物の確保等における二国間協力の深化が求められており、その実現には官民の緊密な対話と連携が不可欠であると指摘した。
続いてカリヤニ氏からは、日印の相互補完性を生かした経済連携を一層深化させるための優先課題として、(1)インドの製造拠点としての競争力を活用したグローバル・バリューチェーンの強化(2)日本からの対印投資の拡大(3)AIや半導体をはじめとする新興技術分野における協力推進(4)非関税障壁の解消に向けた規格・基準の相互承認――を挙げ、両国経済関係の持続的な成長と繁栄への期待を表明した。
議論を踏まえて採択された共同声明では、両国の経済関係を一層深化させる方針が確認された。
日印包括的経済連携協定(CEPA)改訂や租税条約見直しを通じた制度整備に加え、インドの将来的な環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)参加への協力、世界貿易機関(WTO)改革や日米豪印の協力枠組み(クアッド)における新興技術分野での協力が盛り込まれた。
経済安全保障分野では、日印経済界による情報共有・連携強化の場として「日印民間経済安全保障対話」(仮称)の設立準備に合意した。その他、脱炭素、半導体、先端製造、スタートアップ・中小企業支援、人材交流、宇宙、エンターテインメント分野に至る幅広い連携強化が打ち出された。
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同日午後には、経団連、日本貿易振興機構(ジェトロ)、経済産業省、日本商工会議所、駐日インド大使館と日印経済フォーラムを共催。石破茂内閣総理大臣とモディ首相の臨席のもと、日印双方合わせて約700人の盛会となった。日印BLFの両共同議長が両首相に日印BLFの模様を報告した。

カリヤニ氏(左)と筒井会長~日印BLF
同フォーラムのあいさつで石破首相は、普遍的価値観を共有し、戦略的パートナーである日印のさらなる発展に向けて、(1)人的交流の促進(2)技術と市場の融合(3)半導体やAIをはじめとする重要技術分野における協力――を提起した。
モディ首相は、インドが政治的・経済的に安定し、予測可能性の高い国であるとともに、ビジネス環境の改善に注力していることを強調。日印連携の重点分野として、(1)製造業(2)技術とイノベーション(3)グリーンエネルギーへの転換(4)次世代インフラ(5)人材育成と人的交流――の5分野を提案した。
【国際協力本部】