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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年9月18日 No.3698 意見書「『人権尊重経営』の推進~『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待」を公表

経団連は9月16日、意見書「『人権尊重経営』の推進~『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待」を公表した。政府による「『ビジネスと人権』に関する行動計画」(NAP)の改定に合わせ、企業が人権尊重経営に取り組む際の基本的な考え方と、改定NAPへの反映を求める政府の取り組みを示した。概要は次のとおり。

■ NAP改定の背景と経団連の基本的な考え方

2011年に国連人権理事会で支持された「ビジネスと人権に関する指導原則」(以下、指導原則)は、国家の人権保護義務、企業の人権尊重責任、被害が生じた場合の救済確保――を定める。

日本政府は、指導原則を国内で実施するための政策戦略として、20年にNAPを策定したが、25年度末で期間を終えることから、現在、改定に向けた検討を進めている。

経団連は、17年の企業行動憲章の改定等を通じて、企業の人権尊重の取り組みを推進してきた。その結果、「第3回企業行動憲章に関するアンケート結果」によると、指導原則に基づく取り組みを進めている企業は約8割に上っている。また、人権リスクは多様であり、企業は事例ごとに創意工夫を凝らして解決に取り組む必要がある。

したがって、今後も企業の人権尊重の取り組みは、指導原則にのっとって自主的に進めることを基本とし、政府には企業の取り組みを支援する施策を期待する。

■ 人権尊重経営の全体像

企業の人権尊重経営をさらに推進するため、企業と政府には次の取り組みが求められる。

1.人権DD支援の拡充

指導原則が企業に要求する人権デューディリジェンス(DD)に関し、企業は、業界団体主導でガイドラインやベストプラクティスを作成する。政府には、政府のガイドラインの更新や相談窓口の設置、中小企業のキャパシティビルディングを期待する。

2.企業負担も考慮した情報公開の推進

諸外国・地域において人権関連の情報開示を求めるさまざまな法規制があるなか、企業に追加的な負荷が生じないよう、開示基準の整合性確保に向けて、政府が各主体と政策対話を行うことが重要である。

3.救済へのアクセスの充実

企業は、苦情処理メカニズムの実効性向上や必要に応じた外部プラットフォームの活用を進める。政府には、既存の裁判外紛争解決手続(ADR)に関する情報提供等を求めたい。

4.多様なステークホルダーとの対話の推進

企業はステークホルダーとの対話の経験を重ね、真の問題解決につながる双方向・継続的なエンゲージメントに発展させる。政府は、事例集の作成等、真の問題解決に役立つ対話を促進することが必要である。

5.国際調和の推進

欧州では、企業持続可能性報告指令(CSRD)や企業持続可能性デューディリジェンス指令(CSDDD)の簡素化に向けた議論が行われている。政府には、義務内容のEU域内調和や国際基準との整合性確保を欧州委員会に働きかけるよう望みたい。

6.関係府省庁間のさらなる連携強化

「AIと人権」や「環境と人権」等の分野において、関係府省庁はおのおのの所管事項を超えて連携を一層強化することが不可欠である。

◇◇◇

政府は、本意見書で求める内容を改定NAPに反映・実施し、人権問題に対する国民の理解・意識の向上等に取り組むことが必要である。企業・経済界は、今後も指導原則にのっとって、ステークホルダーと対話・協働しながら主体的に人権尊重経営を推進していく。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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