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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年9月18日 No.3698 気候変動問題を巡る国際動向とAZEC構想の進捗状況等 -環境委員会/資源・エネルギー対策委員会/アジア・大洋州地域委員会

経団連は9月2日、東京・大手町の経団連会館で環境委員会(小堀秀毅委員長、野田由美子委員長、宮田知秀委員長)、資源・エネルギー対策委員会(内田高史委員長、木藤俊一委員長)、アジア・大洋州地域委員会(原典之委員長)の合同委員会を開催した。

外務省の中村亮地球規模課題審議官、資源エネルギー庁の龍崎孝嗣次長から、気候変動問題を巡る国際動向、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)(注)構想の進捗状況と課題について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。

その後、AZEC構想の推進に関する第二次提言案について審議した。

中村氏、龍崎氏の説明の概要は次のとおり。

■ 外務省(中村氏)

2024年の世界平均気温は、産業革命前の水準から1.55℃上回り、観測史上最高値を記録した。

世界の気候変動対策は、国連気候変動枠組条約(1992年採択、94年発効)、京都議定書(97年採択、2020年までの枠組み)、パリ協定(15年採択、20年以降の枠組み)に基づいて進められてきた。

同枠組条約は、先進国と途上国の扱いを区別し(共通だが差異ある責任)、先進国の資金協力義務を規定したが、条約発効時の区別が適用され続け、現在では日本より1人当たりGDPの高い「途上国」が資金支援の受益国に整理される状況である。

途上国はかねて「排出量の多い先進国が責任を負うべき」と主張し、先進国は「現在CO2を多く排出する国も責任を果たすべき」と主張するが、世界のCO2排出量の推移を見ると、1990年時点では先進国の割合が大きかった一方、現在では途上国の占める割合が増加している。

この観点でも、先進国・途上国の区別なく削減目標達成に向けた取り組みの実施を規定するパリ協定が重要である。

地球規模課題に関し、米国のトランプ政権がパリ協定離脱を宣言するなど、グローバル・ガバナンスが危機を迎えている。一部の先進国では「途上国よりも自国に資金を投じるべき」という風潮も強まっている。

しかし、地球規模課題は人類共通の課題であり、日本の経済・社会の持続的な繁栄のためにも国際的なルール形成が重要である。日本政府としては、各国と培ってきた信頼関係を基盤に、国際社会の橋渡し役を担っていきたい。

■ 資源エネルギー庁(龍崎氏)

日本とASEANは電力の大宗を石炭・天然ガスの火力発電に依存する一方、再生可能エネルギー資源に制約がある。GDPに占める製造業の割合が高く、産業部門の電化促進といった共通の課題に直面する。

わが国で進められているグリーントランスフォーメーション(GX)の技術開発の成果はASEAN各国でも生かせるし、グローバルなサプライチェーンからASEAN地域が取り残されないためにも、日ASEANが連携してGXを進めることが不可欠である。

こうした背景から、2022年1月に岸田文雄内閣総理大臣(当時)がAZEC構想を提唱した。

同構想では、各国の事情に応じた多様かつ現実的な道筋のもと、脱炭素、経済成長、エネルギー安全保障の確保を同時に実現することを目指している。

世界に目を向ければ、EUは近年、エネルギー政策と産業政策を両立させるアプローチに徐々に変更しつつあり、世界的にも、日本型のトランジション・ファイナンスが現実的だ、という評価も出てきている。ようやく、世界が日本に近づいてきたともいえる。

24年10月に開催された第2回AZEC首脳会合では、「今後10年のためのアクションプラン」を採択し、これに沿って、ルール形成や脱炭素化に向けた各種イニシアティブを進めている。

25年秋に開催予定の閣僚会合プロセスでは、地域の事情を踏まえたトランジション・ファイナンスの必要性・正当性を明確にしたレポートや、脱炭素に関するプロジェクトの進捗等に関するプログレスレポートを公表する予定である。

AZECはいよいよ本格的な実施のフェーズに入る。トランジション・ファイナンスを今のうちに世界的に確立・定着させることを含め、経済界とよく連携しながら、この地域の市場創造とプロジェクトを前進させていきたい。

(注)アジア各国がエネルギー移行を進めるために協力することを目的としたイニシアティブ。日本、東南アジア9カ国、オーストラリアが参加

【環境エネルギー本部】

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