
経済産業省は2023年6月に策定した「日本型標準加速化モデル」について、環境変化を踏まえ25年6月、「新たな基準認証政策の展開~日本型標準加速化モデル2025」を取りまとめた。
同モデルでは、重点分野を定めて標準化に向けた取り組みを加速すべく、パイロット分野として、(1)ペロブスカイト太陽電池(2)量子(3)水素・アンモニア(4)バイオものづくり(5)データ連携基盤――の5分野が設定されている。
経団連では24年度から、国際標準の議論がすでに進展しつつある水素・アンモニアについて、知的財産・国際標準戦略委員会国際標準戦略部会(澤井克行部会長)のもとに水素・アンモニアワーキング・グループを新設し、同分野の国際標準戦略に関する基本的考え方について議論を重ねてきた。
その一環として8月6日、同部会を都内で開催し、経産省イノベーション・環境局の中野真吾国際標準課長から同モデルの概要について、水素バリューチェーン推進協議会(JH2A)の斎藤健一郎事務局長代理ならびに前田征児規制標準委員会委員長、クリーン燃料アンモニア協会(CFAA)の青山勝博事務局長から各分野の国際標準を巡る取り組みと課題について、それぞれ説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 経産省(中野氏)
昨今、グローバルな競争環境は一層激化しており、米欧中を中心に、重点分野を定めて標準化活動を加速化させている。そのようななか、日本に不利なルール形成が進められる危機感から、今般、特定分野における国主導の戦略的標準化と国内認証機関の強化を推進すべく、「日本型標準加速化モデル2025」を策定した。
産業構造の転換につながる不確実性の高い分野について、産業政策と連動した形で分野全体の標準化活動を国が牽引すべくパイロット5分野を設定した。水素・アンモニアは、量子やバイオものづくりと並んで、ルール形成で先行して市場を創出していく分野として整理した。
25年6月に政府の知的財産戦略本部が策定した「新たな国際標準戦略」においてもパイロット5分野を含む形で戦略領域・重要領域が選定されている。欧州をはじめ国際的に水素・アンモニアへの関心が高まるなか、官民で連携し、標準化すべき事項の整理や関係者で合意するための座組の形成などを進めていく。
■ JH2A(斎藤氏、前田氏)
JH2Aは、水素社会構築を加速させるための課題解決に取り組むべく、業界横断的な団体として設立。会員の意見を集約し、優先順位を付けながら課題を整理し、国際標準化に取り組んでいる。
水素の製造、貯蔵、輸送、受け入れ等のバリューチェーン全体について個別のテーマを設定のうえ活動しているほか、炭素集約度の算定に係る国際標準の策定にも取り組んでいる。
水素に関連した国際標準化機構(ISO)標準は55件あり、これまでは水素ステーションや燃料電池車(FCV)など自動車関連が多かった。今後は、大規模供給に関する技術要件など、さまざまな分野に広がっていく。
ドイツをはじめ欧州は、欧州規格を国際標準として確立すべく戦略的に取り組んでいる。日本においても、産学官が連携し、業界横断的に国際標準戦略の策定と実行に取り組むことが重要である。
■ CFAA(青山氏)
CFAAは、アンモニアの燃料利用に関する技術の社会実装を目指し、国際標準化に向けた取り組みを始めたところであり、今後強化していく。
21年、燃料アンモニアのルール形成戦略に係る経産省の調査事業を受託し、日本が強みを持つ発電用ボイラーでの排出物低減化技術について、最優先で国際標準化に取り組むべきと整理した。
その後、ISOにおいて活動を開始し、25年1月に技術仕様書が発行され、現在は国際標準化に向けて取り組んでいる。また、ガスタービン、ガスエンジン等のボイラー以外のアイテムの国際標準化についても調査している。
中国や韓国も意欲的に取り組んでおり、引き続き日本企業が最大限メリットを享受できるよう標準化活動を推進していく。
【産業技術本部】