
中原氏
政府の知的財産戦略本部は6月、「知的財産推進計画2025」を決定した。そこで経団連は9月1日、東京・大手町の経団連会館で知的財産・国際標準戦略委員会(遠藤信博委員長、時田隆仁委員長)を開催し、内閣府知的財産戦略推進事務局の中原裕彦事務局長から、同計画について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ IPトランスフォーメーション
同計画では、「IPトランスフォーメーション」と銘打ち、日本が保有する技術力、コンテンツ力、国家ブランド力といった知的資本を最大限活用し、世界の知的資本を呼び込みながら国内外の社会課題の解決を図る「新たな知的創造サイクル」の構築を打ち出した。
実現のための柱として、(1)創造人材の強化を含むイノベーション拠点としての競争力強化(2)知財制度・運用の明確化を含むAI等の先端デジタル技術の利活用(3)「新たな国際標準戦略」に基づく国際標準化の推進やクールジャパン関連産業の海外展開によるグローバル市場の取り込み――の三つを掲げている。
■ 知財・無形資産への投資による価値創造
持続的な成長と社会課題の解決には研究開発投資が不可欠であり、企業における知財・無形資産の価値創造ならびに戦略的な対外発信が重要である。他方、日本の研究開発費総額は伸び悩んでいるうえ、米国企業と比べて無形資産の割合が低い。
政府として、企業向けの知財・無形資産ガバナンスガイドラインのさらなる普及・浸透や、イノベーション拠点税制の周知徹底や対象範囲の見直し等を推進していく。
■ AIと知的財産権
AIを取り巻く環境が日々変化するなか、AI学習コンテンツに係るライセンス市場と権利者への対価還元に向け、利用者の利便性とのバランスを考慮しつつAI事業者による適切な開示対応を促していくとともに、国際的な動向にも目を向けながら、実効性の担保に資するような透明性の確保に取り組む。
生成AIを利用した発明について、AIの開発者等がどのように貢献することで発明者として認められ得るかといった論点についても検討を進める。
■ 新たな国際標準戦略
欧米中がそれぞれ国際標準戦略を策定し、強力に標準化を推進するなか、日本としても社会課題の解決、経済安全保障の確保、グローバル市場への参入拡大を図るべく、今般、19年ぶりに新たな国際標準戦略を策定した。
17の重要領域のなかから対応の緊急性を踏まえ、(1)環境・エネルギー(2)防災(3)モビリティ(4)食料・農林水産業(5)バイオエコノミー(6)量子(7)情報通信(8)デジタル・AI――の8分野を戦略領域として選定。官民による司令塔のもと、経営層の意識改革や専門サービス・人材の育成、国際連携の強化をはじめ、官民一体で標準化の取り組みを推進していく。
■ エンタメ・コンテンツ戦略
日本発のエンターテインメント・コンテンツ産業の海外市場規模を2023年の5.8兆円から33年までに20兆円とする目標に向け、司令塔機能の強化、税制を含めた効果的な支援策の実施、制作に係る労働環境の整備等に取り組む。
■ 新たなクールジャパン戦略のフォローアップ
クールジャパン関連産業を基幹産業と位置付け、経済効果として、33年までに計50兆円以上の海外展開規模とすべく、コンテンツを活用した地方創生と組み合わせて日本ファンの拡大・深化を図っていく。
【産業技術本部】