右からチャルック氏、オルパク氏、満岡委員長、漆間委員長(提供:DEIK)
欧州、中東、アフリカの結節点にあるトルコはビジネス上の重要拠点であり、日本企業も数多く進出しているが、近年、インフレ等によるコスト増加が目立つなど、トルコの優位性には陰りが生じている。こうしたなかで、日トルコ間の貿易投資や第三国協力を推進するには、日トルコ経済連携協定(EPA)の実現が不可欠である。
こうした認識のもと、経団連の日本トルコ経済委員会(満岡次郎委員長、漆間啓委員長)は10月8日、トルコ・イスタンブールで、トルコ海外経済評議会(DEIK)トルコ日本経済委員会と第28回日本トルコ合同経済委員会を共催した。
トルコ政府からは、ヒュスニュ・ディレムレ貿易省国際協定・EU担当局長、日本政府からは、辻阪高子経済産業省通商政策局審議官、勝亦孝彦駐トルコ日本大使らを来賓に迎え、両国の企業関係者約150人の参加のもと、活発な議論を行った。
合同経済委員会に先立ち9月26日、日本側結団式を東京・大手町の経団連会館で開催し、三宅浩史外務省中東アフリカ局審議官から、トルコの内政・外交について、渡邉雅士経済産業省通商政策局中東アフリカ課長からトルコの経済情勢について、それぞれ説明を聴いた。
合同経済委員会の概要と主な成果は次のとおり。
■ 開会セッション
DEIKトルコ日本経済委員会のアフメット・チャルック委員長は、海外市場での両国企業の連携強化に期待を示した。これに対し経団連の漆間委員長は、日本企業のトルコへの進出や海外市場での協力は、EPAがあってこそポテンシャルを発揮できると述べた。
■ トルコの貿易・投資環境の現状と展望
第1セッションでは、トルコの貿易・投資環境の現状と展望をテーマに議論した。
日本側は、トルコには規制や輸入手続きの予見可能性に課題があるものの、裾野産業を含め、より多くの企業進出や直接投資を喚起できるポテンシャルがあり、その発揮のためにEPAの締結が効果的であると強調した。
これを受けてトルコ側は、保護主義の傾向への懸念から、EPA早期締結は喫緊の課題であるとの認識を表明した。
■ 海外市場での協力とジョイント・ファイナンス・イニシアティブ
第2セッションでは、欧州の炭素国境調整措置(CBAM)規制への対応のため、省エネ技術を持つ日本企業とトルコ企業が協力するプロジェクトへの両国の政府系金融機関による金融支援の可能性や、火力発電設備を有する発電船のアフリカでの活用事例などが紹介された。中東、アフリカ、中央アジア等での第三国市場で両国企業のビジネス展開が可能との認識が共有された。
■ ウィンウィンの関係が構築できる個別産業分野
第3セッションでは、都市インフラ、たばこ、デジタルなど個別産業の協力事例を取り上げた。具体的な技術協力の例として、トルコの橋梁の耐震補強工事に関する耐震基準の分析と提言、トルコの若手エンジニアへの技術伝承など幅広い取り組みが紹介された。
■ 成果と今後の取り組み
合同経済委員会の成果として共同声明を取りまとめ、DEIKのナイル・オルパク会長、チャルック委員長、経団連の満岡・漆間両委員長が署名した。DEIKと経団連は、可能な限り早期に、かつ双方にとって望ましい形で日トルコEPAが締結されることを強く望むとし、両国政府にEPAの実現を求めた。
経団連は今回の成果も踏まえ、引き続きEPAの早期締結をはじめトルコのビジネス環境の改善を働きかけていく。
【国際経済本部】
