経団連と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は9月30日、東京・大手町の経団連会館で第3回「経団連・GPIFアセットオーナーラウンドテーブル」を開催した。
政府が2024年8月に公表した「アセットオーナー・プリンシプル」に対する各アセットオーナーの直近の取り組みを聴くとともに意見交換した。
GPIF、国家公務員共済組合連合会(KKR)、地方公務員共済組合連合会(地共連)、日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)らアセットオーナーと、経団連金融・資本市場委員会(髙島誠委員長、中田誠司委員長、佐藤雅之委員長)の委員ら約70人が参加した。各団体の説明の概要は次のとおり。
内田氏(左から3人目)、小西氏(同1人目)、池田氏(同4人目)、松尾氏(同6人目)
髙島委員長(中央)、中田委員長(左)
■ GPIF(内田和人理事長)
GPIFは、25年3月に「サステナビリティ投資方針」を策定した。(1)ESG(環境・社会・ガバナンス)インテグレーション(2)エンゲージメント、議決権行使(3)ESG指数投資、ESGファンド投資(4)インパクトを考慮した投資(5)サステナビリティリスク分析(6)関係団体との協働――等を柱とし、全資産を対象としている。
超長期投資家として、被保険者の利益のために投資収益を確保する観点から、ESGやインパクトを含むサステナビリティ投資を推進していく。
25年に実施した上場企業向けアンケートの結果では、株主との対話(SR)や機関投資家と企業との対話の場で統合報告書が有用なエンゲージメント資料として活用されていることが示された。同アンケート結果も参考に、引き続きスチュワードシップ活動に注力していく。
■ KKR(小西昭博CIO)
KKRは、25年4月に投資原則の策定や行動規範の改訂を進めたほか、運用担当責任者(CIO)を新設した。委託先運用会社のモニタリングも強化しており、毎年、スチュワードシップ活動報告を公表している。
24年以来、メディア業界・舞台芸術界での人権問題を巡り、運用会社を通じて対象企業の対応状況を継続的に確認し、特にトップマネジメントや取締役会の関与の有無を注視するなど、形式的な対応にとどまらない改善を促している。議決権行使に関しては、事務過誤が起こっている運用会社に対し、原因分析や再発防止を求め、契約評価に反映している。
■ 地共連(池田憲治理事長)
地共連では、24年9月に策定した運用力強化の取り組み方針を踏まえた取り組みの進捗状況を25年7月に取りまとめた。ESGファンドを積極的に活用しており、運用受託機関に対して取り組みの質に重点を置いたモニタリングを実施するため、スチュワードシップ活動では、毎年度、深掘りするテーマを設定している。
24年度は、取締役会の実効性、資本政策、人的資本、気候変動、自然資本を重点テーマに設定した。
このほか、CIO、独立リスク管理部門、ESG・スチュワードシップ推進室を設置し、運用力強化の基盤となる体制強化を図っている。
■ 私学事業団(松尾勝CIO)
私学事業団では、25年3月に管理運用の方針を改定したほか、翌4月にはCIOを設置するとともに、運用リスク管理室を独立させてガバナンスを強化した。加えて、資産運用の従事者の増員や外部専門人材の登用等を通じて、運用力の底上げを図っている。25年末までにスチュワードシップ・コード第三次改訂版の受け入れ表明を目指している。
議決権行使を巡っては、委託先運用会社に対してエンゲージメントを踏まえた判断を求めている。投資プロセスにESG情報が統合されていることを確認しているほか、インパクト投資に関する調査研究を進めている。
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説明後の意見交換では、アセットオーナーと指数会社との対話の状況やアクティビストへの対応などを巡り活発な議論が交わされた。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
