オコンジョ・イウェアラ氏(中央)、筒井会長(左から3人目)
経団連の筒井義信会長、柿木真澄審議員会副議長、磯野裕之通商政策委員長、久保田政一副会長・事務総長は10月22~24日、スイス・ジュネーブを訪問した。本ミッションは、筒井会長が2025年5月に会長に就任して以降、初めての海外訪問となった。
世界貿易機関(WTO)のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ事務局長、WTO改革担当ファシリテーターを務めるノルウェー大使、米国・中国・EU・オーストラリア・シンガポールのWTO担当大使らと面会し、先月公表した「『WTO2.0』の構築に向けて~WTO改革に関する提言」(10月16日号既報)の実現を働きかけるとともに意見交換を行った。
オコンジョ・イウェアラ氏の発言概要は次のとおり。
■ 経団連提言の評価
「WTOは必要か」という疑問も提起されるなか、経団連のWTOへの支持を心強く思う。
経団連の提言は、WTO内で取り上げられている改革の論点を網羅する具体的な内容であり、歓迎する。26年3月に開催される第14回WTO閣僚会議(MC14)前のタイミングでの公表であり、時宜を得ていると受け止めている。本提言をWTO改革の議論に取り込んでいきたい。
ハイレベルな貿易投資の基準にコミットする有志国で形成される「自由で公正な貿易投資クラブ」が中核となってルールを作り、そのルールをWTO協定に落とし込んでいく方法など、経団連が具体的で踏み込んだ提案をしたことを評価する。
ただし、MC14までは、WTOの全加盟国・地域がWTO改革の必要性についてコンセンサスを得るために全力を尽くすことが重要であり、それを得たうえで、改革の道筋の一つとしてクラブを提唱した方が各国の理解を得やすい。この進め方は、クラブが閉鎖的であるという誤解を避けるうえでも有効である。
経団連には、他国の経済団体や政府に対しても、WTO改革に向けて協働するよう働きかけてもらいたい。
■ WTO改革の動向
WTOでは、25年6月にノルウェー大使を担当のファシリテーターに任命し、WTO改革に関して議論している。具体的には、WTOが機能している点は何か、機能していない点は何か、将来的な課題に対応するためにWTOをどう位置付けるべきか――といった内容である。
経団連が提言で言及している各論については、次のように考えている。
1.貿易と環境
炭素国境調整措置(CBAM)については、本来の意図に反して保護主義的に見えてしまうことがある。このためWTOは、国際通貨基金(IMF)や世界銀行等と共にカーボン・プライシングに関する作業を行っており、各国で異なる制度を調和できないか検討している。
2.紛争解決
上級委員会が機能回復を停止している。上級委員会を代替するために一部加盟国が運用している多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント(MPIA)の参加国・地域は増加傾向にある。MPIAが拡大することで、WTOの紛争解決機能が相当程度回復することを期待したい。
【国際経済本部】
