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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年11月20日 No.3706 「生物多様性・自然資本保全と持続的な経済成長の両立に向けた提言」を公表

経団連と経団連自然保護協議会は11月18日、「生物多様性・自然資本保全と持続的な経済成長の両立に向けた提言」を公表した。

生物多様性・自然資本保全を巡っては、わが国でもネイチャーポジティブ(NP)経済への移行が国家戦略に位置付けられており、経済界は対応力を高めることが求められている。

2026年に開催される生物多様性条約第17回締約国会議(CBD・COP17)では、30年を達成年とする23項目の世界目標の進捗を評価する「グローバルレビュー」が実施される予定であり、その結果はわが国の政策や企業行動に大きな影響を及ぼすことが見込まれる。

そこで、(1)生物多様性・自然資本保全を新たな成長の源泉とすること(2)気候変動対策等との統合的取り組みを促進すること――を掲げ、初めて自然保護分野の政策提言をまとめた。概要は次のとおり。

■ NP経済への移行による成長の実現

生物多様性・自然資本保全を成長分野として位置付け、さらなる投資を促すためには、基盤整備や自然関連情報の把握と取り組み効果の可視化、わが国における取り組みの国際的な認知度向上と国際標準への反映、経営戦略への組み込みなどが課題である。

こうした問題意識から、次の3点について、政府、企業に求められる取り組みを整理した。

1.生物多様性・自然資本保全の取り組みを通じた企業価値向上と市場創出

政府には、同分野を成長戦略に位置付けて施策を強化することや、国民理解の醸成と行動変容を促す取り組み等が求められる。

企業には、保全の視点を経営戦略に組み込み、関連事業の創出や投資家との対話、人材育成などにより競争力を高めることが期待される。

2.データ基盤の整備とトレーサビリティの確保、国際ルール形成への参画

政府には、自然関連データ基盤整備や指標・評価手法の開発、国際ルール形成における影響力強化、グローバルサプライチェーンのトレーサビリティ確保に向けた諸外国政府との連携推進が求められる。

企業には、情報連携体制の確立や国際ルール形成への参画、人材の確保・育成が求められる。

3.NbSとOECM(注)の推進を通じた地域経済活性化と国際展開

政府には、省庁間連携や国際発信を強化するとともに、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)の成功に向けた機運醸成に取り組むことが求められる。

企業には、地域経済の活性化や企業価値の向上につなげる視点で、地域課題の解決に資するNbS(Nature-based Solutions=自然を活用した解決策)プロジェクトへの参画を検討することが期待される。

■ 生物多様性・自然資本保全と気候変動対策等の統合的アプローチ

生物多様性の喪失と気候変動は密接に関係する重大課題であり、両者を統合的に扱う動きが国際的に加速している。さらに、資源循環を統合的に扱う必要性も認識され始めている。

政府には、国内で生物多様性・自然資本保全等と気候変動対策、資源循環の相乗効果を最大限に引き出す観点から、省庁横断的な政策立案と実施の強化、クレジット市場などの国際動向を踏まえた制度設計、気候変動適応策の充実に取り組むことが求められる。

企業には、統合的取り組みの推進、地域社会への貢献と企業価値向上に取り組むことが求められる(図表参照)。

◇◇◇

本提言の別冊として「生物多様性・自然資本保全に関する統合的取組み事例集」をまとめており、経団連自然保護協議会会員から寄せられた約70の事例を紹介している。

(注)Other Effective area-based Conservation Measures。保護地域以外で生物多様性の保全に資する地域

【教育・自然保護本部】

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