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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年11月20日 No.3706 審議員懇談会を開催 -北村元国家安全保障局長が講演/わが国の経済安全保障の確保

北村氏

経団連は10月29日、東京・大手町の経団連会館で審議員懇談会を開催した。筒井義信会長ならびに冨田哲郎審議員会議長をはじめ、審議員ら約240人が参加。元国家安全保障局長で、北村エコノミックセキュリティ代表の北村滋氏が「わが国の経済安全保障の現段階と企業に求められるインテリジェンス~経済安保の時代、経営者に求められることとは」と題して講演するとともに意見交換した。講演の概要は次のとおり。

■ わが国の経済安全保障関連法制の進展

近年、わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、安全保障の対象は経済分野にまで拡大した。こうした情勢を受け、わが国の経済安全保障関連法制は大きな進展を見せている。

特定秘密保護法、平和安全法制の制定等を経て、2022年に閣議決定された国家安全保障戦略では、外交力・防衛力、さらには経済力を含む総合的な国力を最大限活用する方針が示され、経済安全保障がわが国の安全保障上の重要な柱となった。

この流れのなかで、22年に経済安全保障推進法が制定され(24年5月全面施行)、サプライチェーンの強靭化、基幹インフラの安全性・信頼性の確保、先端的な重要技術での官民協力、特許出願の非公開に関する制度整備が実施されることとなった。

経済安全保障分野へのセキュリティ・クリアランス制度を導入するための重要経済安保情報保護活用法が24年に、安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃を未然に排除し、被害拡大を防止するためのサイバー対処能力強化法及び同整備法が25年に制定された。

高市早苗内閣総理大臣も経済安全保障の推進に力を入れており、先般、トランプ米大統領と経済安全保障の取り組みを一層強化することで合意したほか、政府全体のインテリジェンス司令塔機能の強化に向けた検討を官房長官に指示した。

■ 企業経営者への提言

経済安全保障の確保には、国だけでなく、企業の取り組みも欠かせない。

経済安全保障は「法務・総務の延長」と捉えられがちだが、トップが経営課題と捉え、取締役会のアジェンダとして常設化することを目指すべきである。

(1)事業分野を横断する経済安全保障・サプライチェーン・技術保全の横串を通す役目(2)公開情報・人的情報の収集、分析体制の設計・運用(3)取締役会に定期的なブリーフィングの実施を担うチーフ・インテリジェンス・オフィサー(CIntO)の設置――も望まれる。

経営においては、企業の戦略的不可欠性を維持するために守らなければならない重要な情報・技術・IP(知的財産)、いわゆる「クラウンジュエル(王冠の宝)」を「地図化」することが不可欠である。各企業は、自社のコア技術ごとに機密区分やアクセス権限等を明文化し、経営会議で定期的に更新すべきである。

古今東西、情報は人から漏れるため、機密を生み出し、それを取り扱う人物は、採用前のみならず、採用後も連続的にスクリーニングを実施することが重要である。

取引先もリスクとなり得るとの認識のもと、サプライチェーン全体の透明性確保と継続的なモニタリングも必要である。「人権」「制裁(エンティティ・リストとの照合等)」「デュアルユース」の三つの観点でサプライチェーンのデューディリジェンスを標準化し、契約条項に落とし込むことを推奨する。

企業にとっての経済安全保障の重要性を、経営者自身が深く理解し、前述のような取り組みを実践していかなければならない。

【総務本部】

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