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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年10月16日 No.3701 「『WTO2.0』の構築に向けて~WTO改革に関する提言」を公表

経団連は10月14日、「『WTO2.0』の構築に向けて~WTO改革に関する提言」を公表した。概要は次のとおり。

■ WTO改革の必要性

各国国内および国家間において格差や不均衡が生じ、対立と分断が深まるなか、ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序が大きく揺らいでいる。現状を放置すれば、経済が深刻な影響を受けるだけでなく、力による支配が国際社会の常態となりかねないため、国際経済秩序を維持・強化するための取り組みが欠かせない。

その際、166の国・地域が加盟する世界貿易機関(WTO)が果たす役割は引き続き重要であるが、WTOが必ずしも十分に機能していない現状を踏まえれば、意思決定や紛争解決をはじめとするWTOの改革が不可欠である。

WTOで改革に向けた動きが見られるなか、この機を逸することなく本格的なWTO改革(改革の到達点を「WTO2.0」とする)に着手し、目に見える成果を挙げるべきである。

■ WTO2.0への道筋

経団連は2024年12月に公表した中長期ビジョン「FUTURE DESIGN 2040」(FD2040)で、国際的なルール整備の一環として、WTO2.0の構築を提言している。

今般、WTO2.0に向けた道筋の一つとして、B7東京サミット(23年4月、経団連主催)の共同提言に盛り込まれた「自由で公正な貿易投資のためのクラブ」の形成を改めて提案する。

同クラブは、一定のハイレベルな貿易投資の基準を満たす有志国により形成される。そのうえで、同クラブがその基準や経済連携協定(EPA)等で定められた高水準のルールをWTO協定に取り込むという触媒機能を果たすことで、既存のWTO(WTO1.0)を高度化する。

その過程で同クラブの参加国・地域を拡大し、最終的な到達点としてのWTO2.0の構築へとつなげるべきである(図表参照)。

(図表のクリックで拡大表示)

WTO2.0の構築には、加盟国の強力なコミットメントが必要であることから、現在は2年に1度開催されている閣僚会議を首脳会議に格上げし、毎年開催することが適当である。

■ WTO2.0に向けた改革の方向性・具体策

前述の道筋に沿ってWTO2.0を構築するに当たっては、(1)結果を出せる体制への改革(2)現状に合った体制への改革(3)決めたことが遵守される体制への改革――を進める必要がある。

(1)結果を出せる体制への改革

WTOでは、慣習としてコンセンサスに基づく意思決定が行われているため、現状では1カ国・地域でも反対すれば、物事が決まらない。コンセンサスによる意思決定を基本としつつも、少数の反対国・地域によってルールの形成が妨げられることはない旨をWTO協定に明記すべきである。

(2)現状に合った体制への改革

例えば、公平な競争条件の確保に向けて、過剰生産を助長している市場歪曲的な産業補助金に関する規律の強化が求められる。

(3)決めたことが遵守される体制への改革

WTOは、二審制の紛争解決制度を導入している。

しかし、一部加盟国が控訴審に当たる上級委員会の権限逸脱等を指摘し、上級委員(裁判官に相当)の任命を阻止しているため、控訴審が機能不全に陥っている。このため、紛争の被申立国側が一審の裁定に不満な場合、機能しない上級委員会に「空上訴」することで最終解決を阻止できるのが現状である。

上級委員会の権限を明確化するなど、加盟国の支持を得られる形で紛争解決制度の機能を回復することが求められる。

【国際経済本部】

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