経団連は10月14日、提言「2030年に向けた物流のあり方」を公表した。本提言では、今後5年間の物流政策の基本方針を示す次期総合物流施策大綱に盛り込むべき具体的施策を取りまとめた。概要は次のとおり。
■ 物流を取り巻く現状と目指すべき姿
物流は、いわゆる2024年問題を受け、何も対策をしない場合2030年には輸送能力の34.1%が不足すると試算されている(図表参照)。日本の港湾や空港の国際物流拠点としての競争力は近年低下している。
本提言では、目指すべき政策の方向性を「物流の持続可能性確保」と「成長戦略としての物流政策」と位置付け、取り組むべき施策を六つに整理した。

(図表のクリックで拡大表示)
1.商慣行の見直しに向けた経済界・消費者の意識改革
指定時刻の分散化と柔軟化や、大規模なビルや商業施設など建築物の管理者の協力、レンタルパレットの適切な契約などに向けて、商習慣の見直しを進めるべき旨を提言している。
2.新モーダルシフトの推進
新モーダルシフトの推進に当たっては、労働生産性が高く、環境負荷の少ない内航海運や鉄道輸送へのシフトが不可欠であり、J-クレジット制度等を用いて経済的メリットを荷主に提示する仕組みが必要である。
鉄道については、災害の激甚化に備えた鉄道ネットワークの強靭化、内航海運については、担い手の確保・育成・労働生産性向上に向けた取り組みへの支援を提言している。
3.物流現場のスマート化
デジタル技術による現場の効率化に向けて、トラック予約受け付けシステム、荷待ち・荷役時間の計測システム、共同輸配送に係るマッチングシステムの導入費用の支援を求めている。
4.国際競争力強化・成長戦略に資する施策
近年、日本の物流拠点としての国際的な競争力が低下し、貿易立国の危機に直面している。こうした課題を解決するため、日本の地理的優位性を生かして、アジア地域から南北アメリカ大陸向けの貨物を集約し、国際物流ネットワークのハブになるための戦略の立案と実行が急務である。
国際航空貨物については、成田国際空港の機能強化や、首都圏ハブとしての成田・羽田の一体運営による航空貨物の迅速化・効率化が不可欠である。
国際海上輸送については、国際的な船舶の大型化の流れに対応するため、海運・造船を含む海事クラスターの国際競争力強化に向けた取り組みが必要である。
5.GX推進
グリーントランスフォーメーション(GX)の推進に当たっては、エネルギー効率の向上や新モーダルシフト推進に加え、カーボンニュートラル(CN)燃料への転換に向けた後押しが欠かせない。本提言には、ゼロエミッション船の開発推進などを盛り込んでいる。
6.分野横断的な政策
物流業界の担い手不足の解消には、女性、高齢者、外国人など多様な人材の活躍が不可欠である。そのためには、荷役機器の導入などに加え、働きやすい職場環境の整備が必要となる。
希望すれば親会社がグループ会社全体のCLO(特定荷主に選任が義務付けられる物流統括責任者)を担える制度への変更を求めている。
【産業政策本部】