コーウィン氏
経団連の税制委員会(宮永俊一委員長、北野嘉久委員長)と経団連総合政策研究所(筒井義信会長)は10月30日、経済協力開発機構(OECD)およびOECDに対する経済界の公式諮問機関であるBusiness at OECD(BIAC)と共に、国際課税に関する会議を東京・大手町の経団連会館で開催した。
同会議は、OECDとG20によるBEPS(税源浸食と利益移転)プロジェクトの開始を契機に2015年から開催されており、今回で10回目を迎えた。
OECDのマナル・コーウィン租税政策・税務行政センター局長らOECD関係者、渡辺徹也経団連総研研究主幹、藤井大輔財務省主税局国際租税総括官ら財務省の関係者、国内外の多国籍企業関係者が登壇した。会員企業等から約180人が参加し、コーウィン氏による基調講演のほか、二つのパネル討議を行った。
■ OECDでの議論
OECD/G20 BEPS包摂的枠組(IF)には147カ国が参加し、多国籍企業に対して適正な課税を行うための国際的なルール作りが進められている。その中心的な取り組みの一つが「第2の柱(グローバル・ミニマム課税)」であり、各国でこれに基づく国内法整備が進められている。
こうしたなか、25年6月に「グローバル・ミニマム課税に関するG7声明」が公表された。これは、米国議会でグローバル・ミニマム課税への不満を背景に、米国外の企業に追加課税を行う制度(内国歳入法899条)が提案されたことを受けたものである。
この声明を受け、899条の提案は撤回された。声明では、米国のミニマム課税制度とOECDが進めるグローバル・ミニマム課税の共存が確認されており、その調整方法について、現在IFで議論が進められている。
■ 基調講演
コーウィン氏は、地政学的・経済的な不確実性が高まるなかでの国際課税の課題とOECDの対応を解説。税制における国際協調の重要性を強調し、OECDがこれまで国際協調の場として果たしてきた役割を紹介した。
グローバル・ミニマム課税に関する議論に加え、リモートワークの進展に伴う課税のあり方(グローバル・モビリティ)や、税制と経済成長・格差の関係など、新たな課題にもOECDとして取り組む方針も示した。
■ パネル討議1
「グローバル・ミニマム課税と米国税制の共存およびG7合意の実施」をテーマに議論した。
OECDからは、25年末までに共存の仕組みに関する解決策を見いだすことができるよう、IFで議論している最中であるとの説明があった。
これに対して日本企業からは、グローバル・ミニマム課税の制度設計に関する見直しの可能性や、米国の制度とグローバル・ミニマム課税が共存する場合の公平な競争環境の確保について意見が寄せられた。
■ パネル討議2
「セーフハーバーの設計およびグローバル・ミニマム課税の実施における課題」をテーマに議論した。
OECDからは、グローバル・ミニマム課税に関する申告を本則による計算よりも簡便な方法で行うことができるセーフハーバーに関して、現行の暫定的措置である移行期間CbCRセーフハーバーに代わる恒久的なセーフハーバーを検討していることが紹介された。
これに対して日本企業からは、過度な事務負担が生じないよう、簡素かつ効果的な恒久的セーフハーバーの導入を求める意見や、わが国の外国子会社合算税制との関係で生じる二重課税への対応を求める意見が出た。
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経団連は、今後のOECDでの議論や国内の税制改正に際し、日本企業の問題意識や要望が十分に反映されるよう、引き続きBIACとの連携も図りつつ、OECDおよび日本の財務省などとの対話を継続・強化していく。
【経済基盤本部】
