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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年11月20日 No.3706 人口減少下で目指す国土の姿 -地域生活圏を中心に/地域経済活性化委員会企画部会

宮沢氏

経団連は10月15日、東京・大手町の経団連会館で地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)を開催した。国土交通省国土政策局の宮沢正知総合計画課長から「人口減少下において目指す国土の姿」と題して、地域生活圏の形成を中心に説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 地域生活圏を巡る背景

日本の総人口は2008年をピークに減少期に入り、50年には約1億人と1960年代後半並みに戻る見通しである。人口分布の偏りは深刻化しており、東京圏では人口増加が続く一方、地方では大幅な人口減少が予測され、生活に必要なサービスの提供体制の維持が困難になる可能性がある。

地域での定住には「仕事」と「生活環境」の確保が不可欠であり、例えば生活環境では、交通の利便性や買い物環境などが重要となる。

このようななか、福岡市のように、東京圏への人口流出を抑え、地方圏内で人口を吸収する“ダム機能”を持つ都市が注目されている。

第3次国土形成計画では、中枢中核都市等の機能の維持・強化を図りつつ、広域圏内の生活圏とのネットワークの強化、広域圏の自立的な経済循環システムの構築を図ることを目指しており、「地域生活圏」の確立は重要な要素である。

■ 地域生活圏のポイント

地域生活圏は、市町村界にとらわれず、暮らしに必要なサービスが持続的に提供される圏域を指す。

これからは、官民連携による地域経営への発想転換が必要であり、地域課題を解決しつつ経済的に自立できる民間主体(ローカルマネジメント法人)の創出が求められる。人口減少が進むなかでも、小規模都市で生活サービスを確保し、日常生活が可能なネットワークを形成することが目標である。

その実現に向けて必要な施策について、国土審議会地域生活圏専門委員会では、関係省庁の参加を得て議論し、2025年夏に報告書をまとめた。

報告書のポイントは「各地域で異なる課題をしっかりと洗い出すこと」「民間主導の課題解決」「人材をはじめとする地域資源の活用」「関係人口の還流」の4点である。

すでに成果を上げている地域では、民間の外部人材が活躍するケースが多く、熱意ある地域の人との連携で新たな取り組みが生まれる。

例えば富山県朝日町では、外部人材と地域の人が連携することで、人口減少による交通課題に対し、地域型ライドシェア「マイカー公共交通」を構築した。地域課題の解決と持続可能なビジネスの両立を目指している。

国交省は今後も、地域生活圏の構築に向けた予算確保等を通じ、各地の取り組みを支援していきたい。

■ 経済界への期待

地域生活圏の形成には民間の力が不可欠である。多くの成功事例は、外部の視点や新しい発想の導入によって生まれている。経済界には、企業による社会課題解決の取り組みのなかで「地域課題の解決」を明確に位置付け、地域経済社会に積極的に参画することを期待している。

【産業政策本部】

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