ワインスタイン氏
経団連は11月18日、ブランズウィック・グループ シニア・アドバイザーでハドソン研究所名誉所長兼ジャパン・チェアのケネス・ワインスタイン氏を迎え、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。ワインスタイン氏の発言概要は次のとおり。
■ トランプ政権を理解するための視点
米国トランプ政権の動向を理解するためには、まずドナルド・トランプ大統領の人物像と、彼が何を達成しようとしているのかを押さえる必要がある。トランプ大統領は、伝統的な「政策家」ではなく、その行動原理は政策論よりも、むしろ心理や個人的動機から捉えるべきだ。
トランプ大統領は、自身のビジネスマンとしての経験から、「エスタブリッシュメント(既存秩序)のインサイダーは、既存のシステムの欠陥に気付かず、新しいものを生み出せない。自分のようなアウトサイダーこそが、抜本的な変革を起こすことができる」と考えている。
こうしたアウトサイダーとしての視座も、トランプ大統領の発言や政策の真意を理解し、今後を見通すうえで重要な手がかりとなる。
第2次トランプ政権の人事もこのような視点から理解でき、安全保障・外交政策のチームも例外ではない。
同政策に大きな影響力を持つJ・D・バンス副大統領は、米国がこれまでのように、世界の平和と安定のために一方的なコストを負担することは回避すべきと考えている。
エルブリッジ・コルビー国防次官も同様に、米国による他国への関与に対して抑制的な姿勢を取っている。
■ 米国の安全保障・外交政策
トランプ大統領は国際政治を、国際秩序や価値観の観点からではなく、「誰に、どのように圧力をかければ、どのような結果が得られるか」というレバレッジ(力の行使・行使の脅し)を背景とした一連の交渉のプロセスとして捉える傾向にある。
ロシアには石油・ガス企業への制裁を、中国には高関税を課すことで、交渉上のレバレッジを効かせようとしてきた。最近は、こうした手法が万能ではないことも理解されつつある。
トランプ大統領は、自らの歴史的評価やレガシーを強く意識している。このため、ウクライナや台湾が米国の支援に過度に依存することは望んでいないものの、一方的にロシアや中国に譲歩することもないとみられる。
■ 日米関係の展望
このような米国の現状を踏まえると、日本を含む同盟国が、外交・安全保障に関する明確な戦略的ビジョンを持ち、米国に影響力を発揮し得る余地は大きい。
米国の政策決定プロセスの予測可能性は低く、各国のリーダーがトランプ大統領との間に個人的なチャンネルを持つことが、重要なカギとなる。
先日の日米首脳会談では、高市早苗内閣総理大臣がトランプ大統領と非常に良い関係を構築することができた。今後、トランプ政権に対し、同志国としてどのような考え方を提案していくかが重要だ。日本政府および日本企業が、経済安全保障の分野で戦略的な自立性を高め、地域と国際社会の重要な安定化機能を果たすことを期待している。
【国際経済本部】
