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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年12月11日 No.3709 伝える力という強みを生かしたインパクト・レポートに学ぶ -金融・資本市場委員会資本市場部会インパクト投融資WG

経団連は11月10日、東京・大手町の経団連会館で、金融・資本市場委員会資本市場部会インパクト投融資ワーキンググループ(宮田千夏子座長)を開催した。

同WGでは、企業のインパクト投融資の事例をヒアリングすることで気付きや課題を共有し、インパクト投融資推進の方途について検討を深めている。

14回目となる今回は、日本テレビホールディングスの福井崇博経営戦略部主任、メルカリの津田衣音子コーポレートPRマネージャーから、自社のインパクト・レポートを作成する際の工夫や課題等について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 日本テレビ

福井氏

当社は社会課題解決への貢献と持続的成長の両立を目指し、従来の経済的尺度だけではない新たな「モノサシ」を社会に提起すべく「社会的インパクトの測定とマネジメント」に取り組んでいる。1000億円の成長投資枠のなかで、事業基盤強化を目的としたインパクト投資もしている。

長期目標に掲げた「感動と信頼でつながる共創社会」の実現に向けて、(1)クリエーター支援(2)DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)(3)環境――の三つの投資テーマを設定した。

これまで、映像クリエーター向けキャリア事業、縦型ドラマの制作、傘のシェアリングサービス――をそれぞれ手掛けるスタートアップ3社に出資した。

自社の事業のインパクトを測定・管理すべく、日本のメディアとして初めてニュース報道のインパクト測定マネジメント(IMM)を導入した。

報道局は2023年夏以降、「誰かのきっかけになる報道」との指針を掲げており、番組を通じて視聴者の意識と行動を変え、社会変化のきっかけとすることを目指している。この一環として、ニュース報道の価値の可視化や数値化を試行している。

日本のインパクト投資市場に、伝えるプロである当社が参入することで、インパクト投資のさらなる普及と市場拡大に貢献していきたい。

■ メルカリ

津田氏

当社は「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」とのミッションを掲げ、上場直後からESG(環境・社会・ガバナンス)プロジェクトを立ち上げるとともに、20年から毎年、インパクト・レポートを公開している。

25年9月に公表した最新のレポートでは、投資家等が求める五つのマテリアリティを網羅した形は維持しつつ、消費者をはじめ一般の方々にも分かりやすい内容を目指した。

例えば、フリマアプリ「メルカリ」での取引を通じたポジティブインパクトについて、服1着のメルカリでの取引はエアコンの27時間分の使用量に相当するなど、より身近に感じられる表現を工夫した。

このようなインパクトの可視化は社内外からの評価が高い。当社がメルカリ利用者を対象に実施したアンケートでは、半数以上が利用をきっかけに社会課題への関心を持つようになったと回答している。当社のサービスを通じて個人の行動変容が後押しされているとの手応えを感じている。社内の従業員の働きがい、やりがいの向上にもつながっている。

「Inclusion & Diversity」を強力に推進する当社のインパクト・レポートでは、男女の賃金格差の是正など、人的資本への取り組みに関する記述も充実している。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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