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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2025年12月11日 No.3709 バイオエコシステムを視察 -ウィスコンシン州/ワシントンレポート

ウィスコンシン州は、バイオを中心とする効率的なイノベーション拠点である。全米第6位の研究予算を誇るウィスコンシン大学マディソン校(UWマディソン)や、米国最大級の電子カルテ企業Epic Systemを有し、再生医療、AI診断、データ駆動型の個別化医療に強みを持つ。

経団連事務局は11月5~7日、日本貿易振興機構(ジェトロ)による同州の視察ミッションに参加し、産学官関係者と意見交換した。概要は次のとおり。

■ 大学発スタートアップ創出の仕組み

エコシステムの中心にあるUWマディソンは、年間研究予算17億ドル、うち5億ドルが医療・公衆衛生分野に充てられている。

これにより生じる大学の知的財産(IP)は、100年前に大学外に設置されたウィスコンシン同窓研究財団(WARF)が運用する。

WARFのマイケル・フォーク氏によると、2245件のIPを基にライセンス契約とスタートアップ創出を通じた社会実装を進め、そこで得た収益を次の研究開発や起業家支援に還元している。独自のアクセラレータプログラムとWARF Ventures等の投資ファンドを保有し、政府資金によらず自走する成功モデルといわれる。

複数の日本企業がWARFと直接ライセンス契約しているほか、出資先スタートアップの3分の1以上が日本企業と提携しているという。

加えてバイオ領域では、大学の起業支援プログラム(Isthmus Project)が製品評価や市場調査を行い、臨床試験研究所が規制対応や現場実装を推進することで、一気通貫した支援スキームを構築する。

成功例の一つはヒト細胞を開発・製造するCellular Dynamics International社で、2015年に富士フイルムホールディングスが買収した。

東京大学と共同で創出したスタートアップであるワクチン開発のFluGen社は、日本市場進出の準備を進めている。

■ ヘルスデータハブの構築に向けて

23年、ウィスコンシン州は米連邦政府が推進するテック・ハブの一つ「ウィスコンシン・バイオヘルス・テックハブ」に指定された。

取り組みをリードするのは、関連企業200社が集まる業界団体Bio Forwardと産学連携のコンソーシアムだ。ハブ構築に向けて、連邦予算4900万ドルを含む8000万ドル超の資金が拠出されている。

目玉はヘルスデータハブの構築で、患者データ、治療記録を含む広範なデータを安全に集積できるリポジトリを作り、産業成長のエンジンとすることを目指す。

Bio Forwardのウェンディ・ハリス氏によると、特にスタートアップに良質なデータを安価で提供することで、州内外の若い起業家を引き付ける。

研究能力に加えて、0.4%と低い法人実効税率(ただし製造業・農業の対象企業に限る)、高学歴で勤勉な労働者、比較的低い居住コスト等を強みに、同州はさまざまな日本企業を引き付けている。

UWマディソンのジョン・ガーネッティ氏は「ハブは多くの新しい連携が生まれる触媒として機能しており、日本企業との連携を大歓迎する」と述べた。

【米国事務所】

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