経団連は11月11日、東京・大手町の経団連会館とオンラインのハイブリッド形式で、過重労働・ハラスメント防止対策セミナーを開催した。企業の人事・労務担当者ら約240人が参加した。概要は次のとおり。
■ 小路明善副会長・労働法規委員長あいさつ
わが国で過労死・過労自殺が社会問題となって30年以上が経過した。官民を挙げた取り組みにより、労働者1人当たりの年間総実労働時間は長期的に減少傾向にあるなど、一定の成果を上げてきた。
しかし、過労死等の労災認定件数は過去最多の1304件に達しており、過重労働・ハラスメント防止対策は道半ばにある。社員の安全と健康の確保は企業の責務であり、過労死や過労自殺は絶対にあってはならない。
■ 玉木一成弁護士(東京駿河台法律事務所)
2014年11月施行の過労死等防止対策推進法は、国、地方公共団体、事業主等の相互の密接な連携による対策の実施と、国や地方公共団体の対策に事業主が協力する努力義務を定めている。企業には過労死等防止対策に取り組んでほしい。
過労死事案から考える防止対策を二つ挙げる。
第一は、労働時間の正確な把握。賃金算定を行う労働時間にとどまらず、業務に従事している時間や拘束時間にも注意して労働時間を正確に記録する必要がある。そのうえで、長時間労働の防止に向けて、業務内容・業務量の適正化や上司による具体的な業務の指示が求められる。
第二は、早期のハラスメント対策。研修等を通じてパワーハラスメントの6類型(注)を十分に指導するとともに、ハラスメントの周辺にある「上司とのトラブル」にも目を向け、業務に必要な指示や叱責が適切・相当な方法・内容で行われるようにすべきだ。
■ 木村恵子弁護士(安西法律事務所)
企業において、過労死等の防止対策は最も優先すべき経営課題だ。
労働安全衛生法や労働契約法に基づき、企業は労働者の健康管理に関し、法的責任を負う。使用者に代わり業務上の指揮監督権限を有する管理職は、長時間労働や強度の心理的負荷による健康障害を防止する責任を負う。産業医や産業保健スタッフと連携しながら取り組む必要がある。
過重労働防止対策として、(1)管理職等を含む適正な労働時間の把握(2)適正な勤務間インターバルの確保(3)労働時間以外の負荷要因(不規則な勤務、出張の多い業務等)への留意(4)必要に応じた業務内容・業務量の見直し(5)体調不良がうかがわれる労働者への健康状況の確認――が必要だ。
ハラスメント防止対策として、(1)事業主による方針の明確化に際してのトップによる真のメッセージの発信(2)ハラスメント相談窓口の実効性確保(3)余裕のある職場づくりに向けた業務量の削減――等が求められる。
■ 矢内美雪キヤノン人事本部安全衛生部副部長
当社は健康第一主義を掲げる会社として、メリハリのある働き方を実現し、生産性向上とワークライフバランスの好循環を目指す「働き方改革」に取り組んでいる。
過重労働防止対策は、適切な労務管理と健康管理が連動する形で行う。労働時間の管理や年次有給休暇の取得促進等の労務管理を前提に、長時間労働者に対する医師の面接指導や定期健康診断、ストレスチェック等でフォローする。
予防的な視点での対策を心掛けており、健康や労働に関する客観的なデータ等を収集・評価し、職場環境の改善や睡眠時間の確保等の多面的な施策に反映させている。
ハラスメント防止対策として、(1)就業規則での方針表明と周知(2)従業員への啓発・教育(3)相談体制の整備(4)発生時の迅速な対応(5)プライバシー保護・不利益取り扱い禁止――等を実施している。特に、管理職へのハラスメント防止研修に注力している。
過重労働・ハラスメント防止には、制度やルールの整備に加え、現場での率直な対話が重要だ。職場での小さな気付きや違和感が遠慮なく共有できる風土づくりを継続的に推進していきたい。
(注)(1)身体的な攻撃(2)精神的な攻撃(3)人間関係からの切り離し(4)過大な要求(5)過少な要求(6)個の侵害
【労働法制本部】
