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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年1月15日 No.3713 フィジカルAIと産業応用 -現場での実装に向けた課題と可能性/産業競争力強化委員会企画部会

原田氏

政府は経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)で、2025年度中にロボットの実装拡大・競争力強化に関する戦略を策定する方針を掲げている。こうしたなかで経団連は、同戦略の策定に向けた動きを注視しつつ、わが国のロボット(AI+)戦略のあり方について、検討を深めていくことが肝要だ。

12月10日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会企画部会(地下誠二部会長)を開催し、大阪大学大学院の原田研介教授(経済産業省AIロボティクス検討会座長)から「フィジカルAIと産業応用」に関する説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 「当たり前」をロボットに~作業代替に潜む本質的な難しさ

生産年齢人口が減少の一途をたどる日本社会では、あらゆる分野で人手不足が深刻化している。こうした状況下、日常生活や製造現場で人が無意識のうちに行っている作業を、ロボットがどこまで代替できるかが問われている。

一見すると単純に見える人の作業も、掃除や洗濯物の折り畳み、部品の取り出しや組み立てといった動作の背後には、長年の経験を通じて培われた暗黙知が存在する。こうした「当たり前」の動作をロボットで再現することは決して容易ではなく、むしろ評価されにくい作業のなかにこそ、自動化の本質的な難しさが潜んでいる。

■ フィジカルAIの位置付け~従来技術との関係

多品種少量・変種変量生産への移行が進むなか、部品のピッキングや押し付けを伴う組み立て、モノをつかむ作業、さらには工程変更への柔軟な対応など、人の判断や技能への依存度が高い製造工程が依然として数多く残されている。

映像や言語といった入力からロボットの動作を直接生成する「フィジカルAI」は、従来技術を前提とした補完的な活用段階にとどまっており、単体での実用化にはなお課題が残る。

フィジカルAIが急速に発展するなかでも、作業手順の設計や動作生成といった動作計画を基盤としつつ、把持用ハンドの設計や力制御など、従来のロボティクス技術を適切に組み合わせていくことが不可欠だ。

■ 競争力の源泉をいかに涵養するか~実装を支える基盤づくり

米国や中国を中心に、フィジカルAIやヒューマノイド(人型ロボット)への投資や技術開発が急速に進み、国際的な競争が大きな注目を集めている。

一方、技術の可能性と限界を冷静に見極める姿勢がこれまで以上に重要となっている。ヒューマノイドについても、現時点では人の作業を広範に代替できる段階には至っておらず、実用化に向けて依然として多くの技術的課題が残されている。

産業応用・実装段階では、導入に向けた初期相談から仕様検討、設計、製造、運用に至るまでの一連のシステムインテグレーションがとりわけ重要だ。しかし現状では、各工程に蓄積されたノウハウの多くが個人の経験や暗黙知に依存しており、導入コストの高さや再現性の確保など課題は多い。

フィジカルAIの可能性を見極めつつ、既存のロボット技術を確かな土台として、現場での実装に向けた取り組みを着実に積み上げていくことが求められる。研究と産業応用の距離を縮めながら、人の作業を現実的に支えるロボット技術の確立に引き続き取り組んでいきたい。

【産業政策本部】

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