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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年1月15日 No.3713 パーソナルヘルスレコードの利活用に向けて -イノベーション委員会ヘルステック戦略検討会

石見氏

予防医療や健康増進の重要性が高まるなか、本人や家族が主体となって生涯の健康および医療情報を管理し、本人の意思のもとで活用する仕組みがPHR(パーソナルヘルスレコード=個人健康記録)だ。PHRは、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を通じたイノベーションの起点となり得る。

経団連は12月9日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催した。

PHR普及推進協議会の石見拓代表理事から、PHR普及推進協議会の活動とPHRデータの2次利用(研究、創薬、政策立案など公益目的での利用)について、説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。

■ PHR普及推進協議会の活動

日本には健康診断文化や手帳文化があり、血圧や体重など生活に密着した健康データが蓄積されているが、紙媒体が中心であり、十分に活用されていない。こうしたなか、PHRが扱うのは、ライフログから健診・医療情報まで、本人が日常生活で生み出すデータ(Person Generated Data)だ。

PHR普及推進協議会は2019年の設立以降、産学官医民の連携でPHRの普及促進に取り組むとともに、PHRサービスの質を確保するため、国のPHR指針を補完するガイドラインの整備や、サービス間でデータを「移せる・つなげる」ための標準化に取り組んでいる。

■ PHRデータの利活用の課題

PHRの価値を高めるには、ライフログと、医療機関の診断・検査結果・転帰(経過や結果)を組み合わせて活用できることが不可欠だ。その前提として、データ形式・交換方法の標準化、データの出所および品質を示すメタデータ(測定条件・時刻などの説明情報)の整備が欠かせない。

医療者がPHRを閲覧できる仕組みはあるが、院内ネットワークがインターネットから分離されていることや、電子カルテ側でPHRを取り込むことを前提としたデータ構造や規格が十分に整備されていないことなどから、両者の接続は十分に進んでいない。医療現場の負担軽減の観点から、医療者が参照するうえで本当に必要となる項目に標準化を絞り、要点を分かりやすく示す工夫が求められる。

■ 今後の展望

まずは、本人や家族がメリットを実感できる1次利用(医師による診療など患者に直接関わる利用)を広げ、良質なデータの蓄積につなげることが重要だ。1次利用によるデータ蓄積が進むことで、2次利用の促進にもつながる。

現在、日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発事業と連携する形で生活習慣病や救急・災害領域から標準化が進められている。

このほか、全国医療情報プラットフォームからマイナポータル経由で得られる基礎情報に加え、変動するライフログや終末期の救命処置継続の意思といった情報を、民間および自治体のPHRサービスにより補完する仕組みも実装に向けて取り組みが進められている。

内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の統合型ヘルスケア構築事業として、心臓突然死の予知・予防サービスの社会実装に向けた研究開発などのユースケースの開発・実証・実装に向けた取り組みも進展している。

健診文化等の日本の強みを生かしつつ、産学官医民が連携して、安心してデータを共有できるルールと基盤を整備し、PHRを起点としたイノベーション創出につなげる必要がある。

【産業技術本部】

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