伊藤長官
経団連は12月17日、東京・大手町の経団連会館で、金融・資本市場委員会(髙島誠委員長、中田誠司委員長、佐藤雅之委員長)を開催した。金融庁の伊藤豊長官から、今後の金融行政の方向性について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 資産運用立国のさらなる推進
金融庁は、高市内閣が目指す「強い経済」の実現に向け、資産運用立国の取り組みを一層推進している。企業、家計、金融機関、アセットオーナーなどで構成されるインベストメントチェーンの各プレーヤーが役割を果たせるよう働きかけていく。
企業には、投資を行い、リスクを取ってリターンを上げることが求められる。そのためには、投資家と健全な緊張関係を構築することが重要だ。企業の取り組みを投資家に説明して評価を高めることで、人的投資や研究開発が進み、企業価値が高まる。
家計は金融リテラシーを高めることが重要だ。NISAの導入により貯蓄から投資への動きが進んできたが、背景にはインフレや金利の上昇がある。金融庁は家計が合理的な行動を取るよう、金融教育などを通じて金融リテラシーを高める活動を進めるほか、NISAの対象商品の拡充に向けた検討を行う。
家計の金融リテラシーが高まることで、資産運用業や金融機関の役割も一層重要になる。年金等のアセットオーナーが適切なポートフォリオを構築して運用を行うことで、そのリターンが家計に還元されていく。
■ コーポレートガバナンス改革
企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に向け、形式的な対応にとどまらず、企業と投資家の双方によるコーポレートガバナンス改革の実質化が重要だ。その一環として、コーポレートガバナンス・コードの改訂を検討している。
コーポレートガバナンス・コードは2015年に策定され、今回が3回目の改訂だ。過去2回の改訂では、プリンシプルベースやコンプライ・オア・エクスプレインの思想が貫徹されなかったこともあり、企業活動の制約や事務負担の増加につながったとの指摘も受けた。
今回は、プリンシプルベースのコードであることをあらためて確認し、コンプライ・オア・エクスプレインの精神を重視して、コードのプリンシプル化・スリム化も進める。
企業の情報開示については、人的投資などと経営戦略の関係が分かる開示を進めるため、有価証券報告書の記載事項について検討する。
サステナビリティ情報についても、企業の負担に配慮しつつ、段階的に規制を導入する仕組みを整備する。
有価証券報告書の開示時期については、法制度や慣行も踏まえ、企業に株主総会前開示の検討を促す。
■ デジタル技術を用いた金融サービス
資金決済法では、ステーブルコイン、暗号資産(ビットコインや資金調達のためのコイン)を扱っている。しかし実態を踏まえ、暗号資産は金融商品と位置付け、金融商品取引法で扱う法改正を準備している。
今後、デジタルの資金の流れは急速に広まり、企業の決済や資金の保有のあり方が変化していく。金融庁として対応を検討していく。
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意見交換では、髙島委員長が伊藤長官に意見書「持続的な成長に向けたコーポレートガバナンスのあり方」(12月18日号既報)を建議した。
髙島委員長は、中長期的な企業価値の向上に資するガバナンスへの移行に向け、企業、株主・投資家、株主総会や開示、株主権等の課題に関する基本的な考え方を説明した。
その後、企業情報開示や議決権行使助言会社の規制などについて意見を交わした。
【経済基盤本部】
