政府は経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太方針2025)で、2025年度中にロボットの実装拡大・競争力強化に関する戦略を策定する方針を掲げている。
こうしたなか、経団連は同戦略の策定に向けた動きを注視しつつ、わが国ロボット(AI+)戦略のあり方について検討を進めている。この検討の一環として1月21日、東京・大手町の経団連会館で産業競争力強化委員会企画部会(地下誠二部会長)を開催した。
AIロボット協会(AIRoA)の尾形哲也理事長、日本ロボット工業会の橋本康彦会長から、AIロボティクスを巡る最新動向や、日本の産業競争力強化に向けた課題や展望等について、それぞれ説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 日本のフィジカルAIの取り組み(尾形氏)
基盤モデル(注)の登場に伴い、フィジカルAI(現実世界における物理的タスクを実行可能なAI技術)は実装段階に入りつつある。生成AIのロボットへの応用によって、人間が設計する中間工程を排し、データからロボットに最適な処理構造を直接学習させる「End-to-End」アプローチがますます重要となっている。
数十回程度の深層予測学習を行うことで、ロボットがこれまで学習していないタオルや本でも、高速かつ反復して折り畳む動作が可能となり、細かな作業手順を逐一教え込むことが不要となる。
こうしたフィジカルAIを開発し、社会に普及させていくには、人間の動作やスキルに根差したデータを継続的に蓄積・活用する基盤が欠かせない。
そこで24年12月に設立されたAIRoAでは、AIロボット開発・普及のカギを握る「データエコシステム」(ロボット稼働データが集まる仕組み)構想の実現に向けて取り組んでいる。
オープンフィールドにあるフィジカルAIについて、産学官がおのおのの役割を担いながら取り組みを強化することが、今後のわが国産業競争力の行方を左右する。
■ AI+ロボットにおける日本の勝ち筋(橋本氏)
AIとロボットを巡る技術環境が大きく変化するなかで、日本の競争力をどこに見いだすかが問われている。
中国では政府主導のもと膨大な資金と人材が投入され、国家戦略としてのAIロボット開発が一層加速している。跳躍や高速動作など視覚的に訴求力の高いデモが国際的にも注目を集めているが、作業ごとの習得度や高い信頼性が求められる領域では、社会実装上課題がないとは言い切れない。失敗が許されない作業では、高い再現性と安定性が前提となる。
この点、わが国のロボット産業は、溶接や塗装、組み立てといった製造の現場でのアプリケーションを起点に、作業分析や作り込みを積み重ねてきた実績がある。成功率99%では不十分とされる産業現場で、99.9%以上の信頼性を追求してきた経験とノウハウは、日本の大きな強みといえる。
AI技術が急速に進展する一方、現場での作業や運用の重要性がますます増している。現場を起点としてロボットを作り込みながら、人の動きを再現するロボットを追求する取り組みを組み合わせるなど、現場のノウハウとAIの有機的な連携こそ、日本ならではのAI+ロボット戦略の道筋となるのではないか。
(注)大量のテキストや画像等のデータに基づく学習により、要約・対話・翻訳等多様なタスクに対応できる汎用的なAIモデル
【産業政策本部】
