菊川氏
経団連と政府は、2022年の「スタートアップ躍進ビジョン」で掲げた、5年以内にスタートアップの数・成功のレベルを共に10倍にするという目標「10X10X」を共有している。同年の「スタートアップ育成5か年計画」は、策定から3年が経過した。
そこで経団連は1月22日、スタートアップ委員会(南場智子委員長、髙橋誠委員長、出雲充委員長)と同企画部会(齊藤昇部会長)の合同会合をオンラインで開催し、経済産業省の菊川人吾イノベーション・環境局長から、5か年計画の進捗状況について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ スタートアップを巡る現況
世界的に資金調達環境が厳しいなかでも、日本のスタートアップ数は21年比で約1.5倍に増加するなどエコシステムの裾野は拡大している。スタートアップによるGDP創出額は直接効果で12兆円に上り、マクロ経済に一定のインパクトを与えている。一方、ユニコーン企業は8社にとどまっており、目標の100社から遠い。
■ 政府の取り組み
今後は3本柱として、(1)スタートアップのスケールアップ(2)ディープテック・スタートアップの支援(3)地域の経済社会を担うスタートアップの創出・育成――に取り組んでいく。
スケールアップについて、内外からの成長資金の供給拡大に向け、東証グロース市場における上場維持基準の見直しのほか、海外投資家を呼び込むべく、恒久的施設(PE)課税特例の改正を行い、海外投資家が有限責任組合員(LP)出資を行う際、非課税となる持分割合要件を25%未満から50%未満に引き上げた。
研究開発税制についても、六つの戦略技術領域の税額控除の上限を40%に引き上げた。
その他、新規公開株式(IPO)以外の出口の多様化に向けてM&Aを促進すべく、オープンイノベーション税制は50%以下のマイノリティ出資も対象に拡充したほか、M&Aガイダンスの作成も進めている。
加えて、グローバルネットワークの強化も重要であり、起業家を海外に派遣するプログラム「J-StarX」に引き続き取り組む。
25年9月、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場で開催した「Global Startup Expo 2025」では、海外から投資家や起業家を数多く招聘した。海外ベンチャーキャピタル(VC)の日本進出も発表した。現在、海外VCのさらなる誘致に向けて諸外国の政策を調査しており、有効な施策を打ち出していきたい。
ディープテック育成については、ミドルステージ以降の資金供給不足が大きな課題だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」を活用して、研究開発から量産化、事業開発までの一気通貫で支援する体制を充実させる。
政府調達は5か年計画の目標である3%には政府全体としてはまだ達していないが、製品・サービスの実証・導入を着実に進めている。大企業等による実証フェーズを支援する補助金も検討しており、大企業による調達の拡大も期待される。
この他、経団連が提言「Science to Startup」(24年9月公表)で提唱した、大学の知を外部から掘り起こすイグニッションチームへの支援策も現在検討している。
これらの施策を企業に有効活用してもらうため、成功事例をつくるとともに、施策の海外への周知にも注力していく。
【産業技術本部】
