経団連は1月29日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会企画部会(田中朗子部会長)を開催した。
左から川口氏、堀口氏、小泉氏、板倉氏
文部科学省研究振興局の板倉寛学術研究推進課長、北陸先端科学技術大学院大学の小泉周副学長、科学研究費助成事業(科研費)に関わる若手研究者として、岡山大学の堀口道子教授、海洋研究開発機構の川口慎介上席研究員を来賓に迎えた。
大学の役割の変化や若手研究者の状況、産学連携による新たなイノベーションの創出等について説明を聴くとともに意見交換を行った。概要は次のとおり。
■ 科研費の大幅拡充と若手・国際性への支援の強化(文科省説明)
板倉氏は、科研費の令和8年度予算案は前年度比101億円増の2479億円と、当初予算としては約15年ぶりの大幅拡充と説明した。
とりわけ若手研究者を中心とした支援強化の観点から、既存の学問体系の変革を目指す「挑戦的研究(萌芽)」に新たな若手支援強化枠を設けるとともに、「基盤研究(B)」(注)で国際性を発揮することが期待できる研究への研究費の重点配分を拡充する方針が示された。
■ 大学は、地域・社会と共に価値の共創を図る「第四世代」へ
小泉氏は、新たな大学の姿として、教育・研究・イノベーションを包括的に捉え、社会的インパクトと地域発展を強く重視する「第四世代大学」という考え方を提示。すでに欧州では、研究成果の社会実装を前提に、産業界と大学が研究の初期段階から価値を共創する段階へと移行しつつあると説明した。
科研費等の公的資金は、令和7年度の新規公募から研究成果の「オープンアクセス化」が義務化されたことを踏まえ、論文や根拠データが原則、世界中に公開される。これを踏まえ、論文公表前の「クローズドな段階」で企業と研究情報を共有し、共に研究を育て、活用する産学連携の仕組みの必要性を提起した。
■ 現場が抱える産学連携の課題
意見交換では、大学、研究機関、企業の各立場から、忌憚ない意見が出され、現場が抱える課題が出席者の間で共有された。
特に若手研究者は、若手研究者が企業と対話する機会が乏しく、研究者自身が実用化や知的財産戦略を学ぶ機会が重要と強調した。
企業は、契約を伴わない情報収集の機密保持リスクへの懸念や、自らも大学の研究シーズを見極め、活用する目利き力を磨くべきとの意見を示した。
これらを踏まえ、イノベーションの創出には、信頼関係に基づく非公式、対面的な人的ネットワークの構築を強化することが有効な手段の一つとの見方を出席者の間で共有した。
(注)科研費の研究種目の一つ。1人または複数の研究者が共同して、500万~2000万円規模で3~5年間行う独創的・先駆的な研究
【産業技術本部】
