経団連は2月3日、東京・大手町の経団連会館でダイバーシティ推進委員会企画部会(工藤禎子部会長)を開催した。
組織開発のコンサルティングを行うrelateの古野俊幸取締役を来賓に迎え、組織運営における個性の理解と多様性活用の視点から「ストレス特性のDEI~個性の多様性が組織パフォーマンスを高める」をテーマに説明を聴いた。その後、各参加者のストレス特性診断結果を踏まえたグループワークを実施した。概要は次のとおり。
■ ストレス特性から見る個性の多様性
古野氏は冒頭、これまでダイバーシティ推進の中心となってきたジェンダーや国籍などの「属性の多様性」に加え、今後は「個性の違い」に注目したアプローチが重要になると指摘した。
ストレス特性とは、外部からの刺激にどう反応し、何を優先して行動するかといった傾向を示すものであり、個人の思考やコミュニケーションのクセを理解する手がかりとなる(図表参照)。
(図表のクリックで拡大表示)
参加者約60人の診断結果では、約8割が工夫・改善・安定化を得意とする一方で、急な変更や不確実性にストレスを抱えやすい特性である「保全性タイプ」に集中していた。これは日本人に最も多く見られる同質化傾向を示している。
古野氏は、同じタイプが集中すると変化への柔軟性が損なわれ、集団浅慮に陥る可能性があるため、「個性の多様性をどう組織に取り込むか」が重要な論点になると説明した。
■ 異質性が生む健全な衝突
グループワークでは、参加者が自身の特性を踏まえ、「コミュニケーションを取りやすい相手」「ストレスを感じる相手」について意見交換した。
特に議論が深まったのは、「拡散性」と「保全性」の関係だ。自由に発想して動き出す拡散性の傾向のある人と、リスクを抑えて枠組みを整える保全性の傾向のある人とでは、互いをストレスに感じやすい。しかし、両者は本来補完関係にあり、拡散性が得意とするゼロベース発想と保全性が得意とするリスク回避能力を組み合わせることで、組織全体の創造性が高まる。
こうした「健全な衝突」を機能させるためには、個性の違いを能力差ではなく特性差として理解する必要がある。
古野氏は「データによる可視化が、相互理解とバイアス解消を促すカギ」と指摘した。
過去に異質な上司から視座を引き上げられた経験を持つ参加者も多く、異質な関係が自己成長の契機となる点が共有された。
■ データ活用による組織変革
特性差への理解を踏まえ、現場での実装に向けたポイントも示された。
ある製造業では、新規事業が停滞していた背景に、選抜メンバーが既存事業で成果を挙げた「同質な成功者」に偏っていたことが判明した。拡散性を持つ人材など多様な特性を組み合わせたチームへと再編した結果、これまで見えなかった視点や発想が生まれ、新規事業創出につながった。
合併企業の経営チームでは、診断データにより個性バランスを検証し、外部人材を含めた多様な布陣を意識的に整備した。個性を可視化したうえで適材適所を設計し、文化面でも「個性を生かす組織」を掲げることで、ダイバーシティの実装が進んだという。
古野氏は最後に「個性を生かすとは、誰もが力を発揮できる環境をつくることであり、そのためにはデータに基づいた対話が不可欠」と述べ、個性理解を出発点としたダイバーシティ推進の重要性を強調した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
