藤澤氏
経団連は1月27日、東京・大手町の経団連会館で労働法規委員会国際労働部会(市村彰浩部会長)を開催した。デンソーの藤澤優人事企画部カルチャーデザイン室担当係長から、HR(人材)部門におけるAI活用について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ デンソーの取り組み
当社は、2021年から「PROGRESS」という人と組織の変革ビジョンを掲げて、人材戦略を推進している。人材マネジメントに関するさまざまなデータを活用し、人材マネジメントの意思決定の精度向上や業務効率化、社員への提供価値の向上を目指している。
例えば、社員へのアンケート結果からエンゲージメント向上に資する要素を分析して戦略に役立てたり、キャリア面談後のアンケート結果を分析し、匿名処理を施したうえで管理職にフィードバックして面談の高度化や改善を図ったりしている。
■ AIによるキャリア形成支援
AIを活用した特徴的な取り組みの一つに、若手社員向けのキャリア支援レポートがある。これは、過去のキャリアに関するデータ分析結果や事例、人事制度の主な利用者像などの情報を読み込ませた当社のキャリア事情に詳しいAIが、十数種類に分類したキャリアタイプごとのキャリア支援レポートを社員一人ひとりに作成するものだ。
同じものを人間が作成すれば膨大な時間がかかるため対応できなかったが、人間が最終確認と修正を行う前提でAIを活用することでそれが可能となった。
■ AIによる照会対応
AIによって問い合わせ履歴からFAQ(よくある質問)を自動作成するアプリケーションも導入している。これは、人間がAIに作業を指示してから退勤すると、膨大な社員からの問い合わせ履歴をAIが分析し、翌日出勤したときには履歴に基づくFAQのたたき台が完成しているというもので、大幅な経費削減効果がある。
一方で、たった1件の不適切な回答が交じると、重大な問題につながりかねないことから、社員の全ての相談にAIが直接回答することにはあえてしておらず、ケースごとにリスク評価を行っている。このように、AIに任せる業務の範囲や内容は、慎重に検討している。
■ 今後の課題
AIが職場に浸透すると、求められる人材モデルや人材育成、人事評価のあり方は変わっていく可能性がある。組織の権限やデザインにも影響がある。「AIを使うことはずるい」というカルチャーがあれば、それも変えていく必要がある。
哲学的な論点だが、人間がすべき仕事は何かということを、経営層や人事が考えないといけない状況になってきている。
AIの活用方法・範囲や雇用に与える影響、それらを踏まえた対応について、経営層や人事、IT・技術部門が連携して、全社で議論を継続している。
【労働法制本部】
