木下氏
人口減少や医療人材不足が顕在化するなか、限られた資源で持続可能な医療提供体制を構築することは喫緊の課題だ。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)は、デジタル技術を活用して医療情報の共有や業務の効率化を進め、医療の質向上を実現する取り組みであり、その重要性は年々高まっている。
そこで経団連は2月3日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催し、厚生労働省医政局の木下栄作参事官から、医療DXの最新動向と今後の展望について、説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 医療DX推進の全体像
政府は2022年10月、内閣総理大臣を本部長とする「医療DX推進本部」を設置した。関係省庁が連携し、医療DXを一体的に推進している。
この方針のもと、25年12月には医療法等の一部改正法が成立し、(1)地域医療連携の強化(2)医師偏在対策(3)医療DXの推進――を3本柱と位置付けた。
このうち医療DXの推進として、30年までに電子カルテの普及率をおおむね100%とする目標を掲げ、医療機関業務の電子化と情報連携を進める方針を明確化した。あわせて、社会保険診療報酬支払基金を医療DXの実施主体と位置付け、その機能強化を進める。
■ マイナ保険証の普及と活用
医療DXの基盤として、マイナンバーカードと健康保険証を一体化した。25年11月時点で、マイナ保険証の利用件数は月1億件に達し、資格確認の電子化が医療現場に定着しつつある。医療機関側からは、マイナ保険証の情報を電子カルテに取り込むことで、入力作業が軽減され、業務が効率化されたとの声も寄せられている。
こうした日常的な利用以外にも、災害時にマイナ保険証が手元になくても情報確認が可能となる「災害時モード」や、救急隊が現場で患者情報を確認できる「マイナ救急」の取り組みも全国で展開している。
■ 電子処方箋・電子カルテの現状と将来像
電子処方箋は、処方情報を医療機関と薬局で電子的に共有する仕組みであり、重複投薬や併用禁忌の防止といった安全面での効果が確認されている。一方で、医療機関側のシステム対応が十分に進んでおらず、紙処方箋の内容を薬局で手入力する運用も多く、普及が課題となっている。
電子カルテについては、30年の100%導入を目標に、未導入の診療所向けの簡易な「標準型電子カルテ(導入版)」をデジタル庁と連携して開発しており、26年末の完成を目指している。データの標準仕様を整備することにより、ベンダー間の乗り換えやデータ連携も促進していく。
電子カルテの普及後は、「電子カルテ情報共有サービス」を構築し、診療や健診、検査結果などの医療情報を医療機関間で共有し、診療の質向上や重複検査の削減につなげていく。
■ 医療情報の2次利用
こうした医療情報は、診療などの1次利用に加え、将来的には匿名化・仮名化したうえで研究開発などの2次利用にも活用する。そのため、医療・介護データを横断的に連結する基盤整備を進めていく。
【産業技術本部】
