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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年3月12日 No.3721 育てるデジタル、信じるアナログ -両利き化する生活者/生活サービス委員会

左から帆刈氏、伊藤氏

経団連は2月3日、東京・大手町の経団連会館で生活サービス委員会(高原豪久委員長、澤田道隆委員長、細谷敏幸委員長)を開催した。

博報堂生活総合研究所の帆刈吾郎所長、伊藤耕太上席研究員から「育てるデジタル、信じるアナログ~両利き化する生活者」をテーマに、社会のデジタル化が進むなかで、生活者がデジタルとアナログを使い分けている状況や価値観の変化等について聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 生活者分析の視点とデジタル化の現状

博報堂生活総合研究所は、1981年に創設され、92年から生活定点調査を継続して実施している。「タケノコ掘り」のように、地表にわずかに顔を出した社会変化の兆しを掘り起こし、大きく伸びる可能性を持つ芽を発見し、それを届ける姿勢で研究に取り組んでいる。

コロナ禍を経てデジタル化は急速に進展し、ご祝儀の受け渡しや退職届の提出、仕事上の謝罪も「オンラインでも構わない」とする風潮が高まる一方で、アナログ回帰の傾向も出てきている。

デジタル化により選択肢が広がったが、情報過多で生活者がそしゃくしきれなくなっていること、レビューの可視化により「失敗」は減ったが同質化していること、おすすめ機能で効率は上がったが新しい出会いが減っていること――によって自主性が失われつつあることに生活者が気付き始めたのではないかと分析している。

■ 育てるデジタル、信じるアナログ

新しい行動を起こし始めた生活者を掘り下げて調査すると、(1)お気に入りのラジオを繰り返し聴く(タイムラインからの解放)(2)位置情報を友人間で共有し、行ったことのない所を目指して出かけ、無駄を楽しむ(コスパ・タイパからの解放)――などの形で、デジタルツールを本来の用途を超えて使いこなす様子が見られた。

(3)勉強は電子書籍ではなく紙の本を使い込むことで努力を目に見える形にしたい(劣化しないことからの解放)(4)たくさんの同じぬいぐるみの山から自分で「顔」を選んで購入するというプロセスを通じて絆を形成する(ワンクリックからの解放)――といった自分だけの熱量を信じるためにアナログを使いこなす例もあった。

こうした例から、生活者はデジタルを自分の感受性を「育てる」ために、アナログを自分だけの熱量を「信じる」ために使い始めているといえる。

これは過去への回帰ではなく、あらゆるものがデータとなり、指先一つで完結する一方で、「形のないものが確かに存在する」という感覚が希薄になっているからだ。デジタルを使う生活者が増えたからこそ、アナログを「意志を持って」使いこなしている。

■ 企業への示唆

現在の生活者はテクノロジーを活用しながら、その依存性にも気付き始め、自律的に双方の価値を再構築しているタイミングだ。企業視点で考えると、これまでは「どこをデジタル化するか」「何を置き換えるか」が主題だったが、今後は一段進み、「どこに、あえて、どのようなアナログを入れるか」を考えていくことが差別化や価値創出のカギになる。

【産業政策本部】

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