勝部氏
経団連は、2022年3月に公表した提言「スタートアップ躍進ビジョン」で、27年までにスタートアップの数・成功のレベルを共に10倍にするという目標「10X10X」を掲げている。その実現には、特に高さ、すなわちユニコーン数の引き上げが課題であり、大型の資金調達機会の創出やスタートアップのグローバル展開の拡大が必要と指摘されている。
そこで2月16日、東京・大手町の経団連会館でスタートアップ委員会企画部会(齊藤昇部会長)を開催し、産業革新投資機構の勝部邦雄調査室長から、日本のスタートアップの海外進出の動向について聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
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わが国のスタートアップ・エコシステムは過去10年で進歩を遂げてきたが、次世代を担うグローバルトップ企業にまで成長した事例は限定的だ。
スタートアップにとって海外進出は、大きな飛躍を遂げるための重要な選択肢との認識のもと、時価評価額上位の日本のスタートアップのうち海外進出実績のある約30社を対象にデスクトップ調査やインタビューを実施し、25年4月に調査報告を公表した。
グローバル市場への展開には、研究開発やローカライズのために多額の資金が必要とされる。資金調達の各ステージの平均調達額を比較すると、日本は米国の半分以下と大きな差がある。
大型の資金調達を目指すスタートアップにとって、日本のベンチャーキャピタル(VC)より資金力が豊富な海外投資家への期待は大きい。信用力の高い海外VCからの調達に成功した場合、その後の資金調達や人材採用が有利になるというメリットもある。
海外進出と同時、またはそれ以前に海外投資家から出資を受けたスタートアップは35%に過ぎない。43%は海外投資家からの資金調達より前に海外に進出していたほか、そもそも海外投資家から出資を受けていない企業もあった。海外投資家から資金調達を受けたタイミングはシリーズC(注1)以降のケースが大半だった。
欧州では、グロース期(注2)にあるスタートアップに対する出資のうち、海外投資家の構成比は約3割と日本より高い。
海外投資家が日本のスタートアップに投資しづらい理由として、高いリターンを期待する海外VCは比較的早いステージでの出資を好むが、日本のスタートアップは海外からの資金調達を目指す時期が比較的遅く、海外VCの選好とマッチしていないことが考えられる。
技術成熟度が低いなどスタートアップが十分に磨かれていないケースもあった。
日本のスタートアップにとって、国内市場が相応に大きいこと、言語や商習慣などの参入障壁もあって海外に進出せずにある程度成功している事例が多いことが、海外進出に対する負のインセンティブになっている可能性がある。
激しい競争を伴うグローバル市場にあえて挑戦するためには野心が必要だ。先行してグローバルに成功する事例が出てくれば、それをロールモデルとして後続の起業家の野心も高まると期待される。
(注1)黒字経営が安定し、イグジットを目指す段階。スピーダ調達シリーズによる
(注2)ビジネスが急速に大きくなる時期
【産業技術本部】
