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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年4月2日 No.3724 トランプ政権下のディープテック動向

ロ氏

経団連は2月25日、東京・大手町の経団連会館で「トランプ政権下におけるディープテック動向に関する懇談会」を開催した。

グリーンバーグ・トラウリグ法律事務所シニアパートナーのロ・チア・フィン弁護士から、トランプ政権下におけるディープテック分野(バイオ、AI、量子コンピューティング、半導体、ロボティクス)の最新の政策動向について説明を聴いた。概要は次のとおり。

■ 第2次トランプ政権下のディープテック動向

第2次トランプ政権は混乱が指摘される一方、ディープテック重視の政策は一貫している。

行政府主導で産業再編を進めつつ、西側の衰退危機を背景に技術的優位性の確保を国家安全保障の柱と位置付けている。国家間の相互依存から脱却し、米国主導の依存関係構築と、海外企業を含む有用なステークホルダーとの直接交渉を志向するのが特徴だ。

■ 対米ビジネス対応

日本企業には、米国から見て「目立つこと」「不可欠な存在となること」が重要だ。目立ち、不可欠となり、繁栄するというサイクルに入ることで、米国が進めるグローバルなエンジニアリングが生み出す繁栄を共有できる。ただその実現には、米国の国家ミッションに資する価値を迅速に提案する交渉力が求められる。

■ バイオテクノロジー

バイオテクノロジーは、AIや量子のような「攻め」の領域とは異なり、米国内の公衆衛生における課題解決という「守り」の位置付けにある。

米国が求めるものは、革新技術単体ではなく、米国のニーズに対するソリューションだ。MAHA(Make America Healthy Again)政策のもと、食品医薬品局(FDA)は医療費削減や慢性疾患の根治に対する寄与を重視する方向へと転換している。

具体的には、複数回の薬品投与が必要な治療法よりも、1回の治療で完結するような再生医療などが高く評価される。米国の課題解決にいかに直結するかを定量的に示すことが米国バイオ分野の成功のカギだ。

■ AI、量子コンピューティング、半導体

AIはバイオと異なり、米国が世界的な基軸インフラとして支配力を確立する戦略の中核に位置付けられている。非対称な依存関係を構築するため、規制整備よりも技術開発と実装を優先し、政府自らがベンチャーキャピタルのように介入して競争優位を確保している。

「パックス・シリカ」のもと、中国に対する18カ月以上の技術的優位性の維持を重要業績評価指標(KPI)とし、その達成に向けてホワイトハウスはアグレッシブに政策を展開している。

米国の弱みは膨大な電力消費であるため、日本の送配電技術や電力グリッドの効率化技術は不可欠性を示しやすい。

量子コンピューティングに関する現政権の戦略は、AIと統合的に一体の計算能力として扱う点で、これまでのものと一線を画す。これはエネルギー省(DOE)が主導する「ジェネシス・ミッション」に顕著に表れており、日本にも参画の機会が提示されている。

■ ロボティクス

ロボティクスはAIや量子の能力を現実世界で発揮させる「第2層」の技術と位置付けられ、米国では深刻な人手不足を補う手段としてヒューマノイドへの期待が高まっている。

現政権は自動化によって賃金のインフレを抑えつつ製造業の国内回帰を成立させる「ロボショアリング」を推進する一方、安全保障の観点から中国製技術を排除し、信頼できるパートナーからなるサプライチェーンの構築を志向している。

日本企業には技術基盤を支える中核的な役割を果たし、この分野で中国のサプライチェーンが担ってきた重要な機能を代替することが期待されている。

■ 日本企業への示唆

ディープテック分野での中国の台頭は著しく、米国にとって最大の競争相手だ。

技術主権の確立と優位性維持を掲げるトランプ政権の政策を踏まえ、日本企業は国際競争下で生き残るために、自社の提案を戦略的に構築して米国の国家ミッションへの貢献を具体的、定量的に提示し、求める「見返り」を明確化する米国流の交渉姿勢が求められる。

不可欠性を証明し、主体的に交渉を進めることが、日本企業がこの激動のなかで競争力を維持するカギとなるだろう。

【産業技術本部】

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