西口氏
経団連は、2022年に公表した提言「スタートアップ躍進ビジョン」で、27年までにスタートアップの数・成功のレベルを共に10倍にするという目標「10X10X」を掲げた。
政策の後押しも受け、裾野は広がっており、米国のStartup Genome(スタートアップ・ゲノム)が公表する世界のスタートアップエコシステム分析とランキング(Global Startup Ecosystem Report, GSER)で、東京は24年に前年から五つ順位を上げて10位となった。
しかし、25年には11位と順位を下げ、わが国のエコシステムの国際的地位は伸び悩んでいることが示された。
そこで3月23日、東京・大手町の経団連会館でスタートアップ委員会(南場智子委員長、髙橋誠委員長、出雲充委員長)を開催した。
スタートアップ・ゲノム・ジャパン代表取締役でカリフォルニア大学(UC)バークレー校Executive Education日本代表を務める西口尚宏氏から、日本のスタートアップエコシステムの課題と示唆について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 世界のエコシステム
エコシステムとは、ヒト、カネ、アイデアなどのリソースを共有できることだ。ランキングのトップ3はシリコンバレー、ニューヨーク、ロンドンで安定しており、テルアビブ(イスラエル)、ロサンゼルス、北京、ボストンが次点。東京を含むアジアの都市が追いかけている。
トップ40を見ると、強固なエコシステムを持つ国・地域は、1都市のみに依存せず、複数の都市が群雄割拠している。
米国は、シリコンバレーやボストン以外にも多数の都市がランクイン。欧州も各国1都市ずつ、地域全体でエコシステムが分散している。アジアでは、中国とインドの複数都市が入っている。日本も複数都市がランクインするような分散型のエコシステムを目指すべきだ。
東京は、近隣のアジアの都市に比べ、エコシステムの価値、ユニコーン企業数、シリーズA(注)調達額がまだまだ低い。エグジット数は圧倒的に多いが、エグジット額は北京やソウル、上海の方が多い。
日本が注目して学ぶべき都市はソウルだ。韓国は、GSERで上位5位以内に入ることを政策目標として、K-POPに代表されるグローバル展開モデルを基盤に、世界戦略を取っている。
ディープテックに着目し、世界展開を前提として、早く大きく育てることを重視している。海外人材と国内人材による混合経営のチーム組成も進めている。
■ AI活用を前提としたビジネスモデル
AI技術の急速な進展に伴い、プロダクトのコア部分がAIを前提として構築されたビジネスが増えている。
一方、人間は多様な視点を持ち、より人間らしいユニークな発想のもと、好奇心を持って挑戦することが求められるようになる。人材育成は一層重要だが、エンジニアのみならず、AIアントレプレナーの育成も不可欠だ。
UCバークレー校では、AIの活用を前提として、キャンパス全体でアントレプレナーシップのプログラムを展開している。
■ 日本が取り組むこと
日本は、スタートアップの震源地であるシリコンバレーのエコシステムのなかに入り込み、人材を大量に送り込んで、グローバルな視点を持ち帰ることが重要だ。この際、日本人のみでやろうとせず、グローバルな人脈と経験値を高めることが必要だ。
20年かけて成長したロンドンの例も参考に、日本もグローバル市場を目指すスタートアップを数多く生み出し、海外ベンチャーキャピタル(VC)から大規模な資金供給を増やすことが重要だ。スタートアップの海外展開に当たっては、大企業が保有する海外ネットワークを活用することも一案だ。
(注)原則、株価が変化しており、調達後企業評価額が5億円以上の段階。スピーダ調達シリーズによる
【産業技術本部】
