ポーゼン氏
経団連のアメリカ委員会(澤田純委員長、赤坂祐二委員長、森田隆之委員長)は3月13日、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。
米国のピーターソン国際経済研究所(PIIE)のアダム・ポーゼン所長を迎え、「不均衡な米国経済の見通しと日本企業への影響」について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ IEEPAを巡る最高裁判決
米国最高裁判所がトランプ政権による関税措置の一部を違法と判断した。国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として導入された包括的な関税措置の一部が違法と判断されたことは、司法が大統領権限に一定の制約があることを示した点で重要であり、米国で法の支配が機能していることを示した点でも意義が大きい。
ただ今回の判決が直接影響するのはトランプ政権が導入した関税の一部にとどまり、米国は特定の品目や特定の国を対象とした関税措置を課している。
今回無効とされた関税の多くが別の根拠法に基づいて課される可能性もあり、短期的に米国の通商政策が大きく変化する見込みは低い。
■ 不均衡な米国経済
現在の米国経済の特徴として「不均衡」が挙げられる。AI関連分野ではデータセンターや電力インフラなどへの投資が急速に拡大している一方、それ以外の産業分野では設備投資の増加が限定的だ。
本来なら規制緩和や税制改革などにより企業投資が拡大する環境が整っているが、貿易政策の不確実性が企業の投資判断を抑制している可能性がある。
今後のインフレ率は3.5~4%程度まで上昇する可能性があり、場合によっては、連邦準備制度理事会(FRB)による大幅な利上げが必要となる局面が生じ得る。
ドルは地政学的リスクが高まる局面で安全資産として買われやすく、短期的にはドル高で推移すると想定される。
■ 日本と日本企業への示唆
米中関係や中東情勢など国際情勢の不確実性が高まるなか、日本企業の戦略にも新たな対応が求められている。
こうした状況下では、日本企業にとって新たなビジネス機会も生まれている。米国ではサプライチェーン再編が進んでおり、中国に依存してきた分野の一部で日本企業が代替供給者として参入できる余地がある。低性能半導体や医薬品原料などの分野は米国の供給網の多様化に貢献できる可能性がある。
通商ルールの点では、日本が環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)を中心としたルールベースの経済圏を拡大するために重要な役割を果たすべきだ。
これまで日本は米国のCPTPP復帰を見据えて枠組みを維持してきたが、当面はEUなどとの協力を通じてルールに基づく貿易・投資の枠組みを強化していくことが現実的な戦略だ。
【国際経済本部】
