ケロッグ氏
ウクライナ経済復興特別委員会(國分文也委員長)は3月12日、東京・大手町の経団連会館で、米国のキース・ケロッグ前大統領特使(ウクライナ担当)との懇談会を開催した。
米国の外交政策上の重要課題および最近のウクライナ情勢に関する米国の外交方針について、説明を聴くとともに意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 米国の外交政策
トランプ政権の基本姿勢として「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」が挙げられる。
米国は、2025年12月の国家安全保障戦略、26年1月の国家防衛戦略、国務省戦略計画という三つの文書を発表した。
これらの文書に共通するのは、米国本土および西半球の安全確保を最優先に位置付け(ドンロー主義)、米国の国益にとって最も重要な脅威に優先的に対処する一方、それ以外の課題に対しては同盟国が一定の役割を担うことを前提とする考え方だ。
インド太平洋、欧州、中東の各地域では、米国が平和の確保の全てを単独で担うのではなく、同盟国と負担を分かち合いながら「力による平和」を実現していく構想が示されている。
日本については、在日米軍の存在に加え、防衛費の増額や反撃能力の整備を進めている点が評価されており、地域の抑止力を支える重要なパートナーと位置付けられている。こうした路線は、単純な孤立主義ではなく、スマートパワー(注)の発想に基づくものだ。
■ ウクライナ・ロシア戦争
強調したいのは、「ロシアは戦争に勝利しているわけではない」という点だ。
22年の全面侵攻以降、ロシアが新たに獲得した領土は限定的である一方、人的損失は極めて大きいとされる。仮にロシアが軍事的に優勢であったならば、主要都市をすでに制圧していた可能性が高いが、実際にはウクライナ軍の強い抵抗により、それは実現していない。
ロシアは前線で決定的な成果を挙げられない状況が続き、都市部や民間インフラを対象としたミサイルやドローンによる攻撃に依存する傾向がみられると指摘されている。
一方、和平交渉には一定の進展もみられるものの、領土問題が大きな障害となり、両国の立場の隔たりは依然として大きい。この状況を打開するためには、双方が一定の勝利を主張できるような枠組みを模索することが重要だ。
■ 停戦後復興の課題
和平の初日から国家再建が最大の課題になる。
重点分野は鉄道と道路を中心とする交通インフラだ。老朽化した鉄道システムや、爆撃で損傷した道路網を近代化しなければ、人や物の移動、観光、経済活動の正常化は進まない。学校、病院、住宅、オフィスなど生活基盤そのものも広範に破壊されており、その再建も急務だ。
エネルギー分野では、ザポリージャ原子力発電所やカホフカ水力発電所ダム関連施設の再建と運営体制の再構築が、将来の安定供給に直結する重要課題だ。
産業基盤の再建も非常に重要なトピックだ。米欧企業との共同生産は不可欠だが、最終的にはウクライナが自国の兵士のために、自国で装備を生産できる体制(メードインウクライナ)を築く必要がある。
(注)ハードパワー(軍事力、経済力)とソフトパワー(文化、価値観、外交的魅力)を組み合わせて自国の目的を達成しようとする外交戦略
【国際経済本部】
