経団連は4月14日、「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」を公表した。
報告書は、企業ヒアリングを通じて明らかとなった日本企業におけるHR(人事)部門でのAI活用の状況や課題を整理するとともに、AIを活用する際の基本的な考え方や求められる対応をまとめたもの。
ヒアリングした8社の先進的な取り組み事例も掲載している。報告書のポイントは次のとおり。
■ 活用現状
近年、生成AIの急速な普及により、企業活動におけるAI活用の重要性が高まっている。経団連会員企業を対象とした調査によると、約9割が何らかの形でAIを活用しており、HR部門でも活用が広がっている。特に「採用」「人材育成」「労務管理」での活用が比較的多く、「人材配置」でも活用されている。
「採用」においては、応募者スクリーニング(応募者の録画面接や選考書類の内容をAIが分析し、行動特性などを自動的に評価・判定)や、面接サポート(面接内容の要約の自動生成や面接官の意思決定支援)で活用されており、採用に関する工数削減や面接の質の向上を実現している。
「人材配置」では、社員の職務経験やスキル、志向等のデータを基に、AIがポジションマッチングやキャリアの選択肢を提示する取り組みなどが見られる。
「人材育成」では、AIが面談支援や研修をレコメンドするなど、社員一人ひとりに応じた育成を支援するケースがある。
「労務管理」では、社員から人事への問い合わせの1次対応をAIチャットボットが担うことで、業務負荷の軽減や迅速化につなげている例があった。
■ AI活用の基本的な考え方
HR部門でのAI活用により、意思決定の精度向上、業務効率化、社員への提供価値向上など、HR部門全体の高度化が実現可能となる。そして、生産性の向上、イノベーションや付加価値の創造を加速する組織への変革も期待できる。
その際企業には、HR部門でのAI活用を人間の意思決定のサポート機能として位置付け(大前提)、(1)安全性・公平性・透明性の確保(2)戦略的推進体制の構築(3)現場に根付かせるための運用および定着の仕組みづくり――の三つの対応が求められる(図表参照)。
(図表のクリックで拡大表示)
このうち(1)については、HR部門は個人のキャリアや処遇に大きな影響を与える判断を扱うため、総務省と経済産業省による「AI事業者ガイドライン」などを参考に、安全性・公平性・透明性を確保することが重要となる。
(2)については、社内の推進体制の整備が重要だ。AI推進責任者の設置や外部からのAI人材の獲得などを通じ、戦略的にAI活用を推進する体制を構築することが求められる。
(3)については、AI活用を現場に根付かせ、社員の不安を解消するために、丁寧に説明をしながら「現場の理解を得ること」、日々進化するAIへの対応やデータの整備など「継続的にアップデートすること」、効果の見えやすい業務から「小さくはじめること」などが成功のカギとなる。
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報告書は経団連ウェブサイトに掲載している。引き続き企業ヒアリング等を通じて好事例の収集を行い、定期的に内容をアップデートしていく。
【労働法制本部】
