経団連は3月16日、「健康経営セミナー」を東京・大手町の経団連会館で開催し、170社、約300人が参加した。健康経営の裾野拡大に向けて、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の岡村智教教授が講演し、企業からは取り組み事例を聴取した。概要は次のとおり。
■ 岡村慶應義塾大学教授講演
循環器病対策では、行動変容に対するハードルを下げる観点から、集団全体の健康を底上げするポピュレーションアプローチが有効だ。
高血圧には、塩分を控えカリウムを摂ることで「ナトカリ比」を下げることが重要。例えば社員食堂でのスマートミール提供や売店での食塩相当量の表示等による「職場の食環境整備」が効果的で、健康経営に取り込むべき視点だ。
日常的な血圧測定など地道な取り組みも必要だ。
■ 企業事例紹介
1.野村ホールディングス(河野和絵カルチャー&エンゲージメント部ヴァイス・プレジデント兼ヘルスサポートグループ長)
当社は、がんによる社員の離職を防ぎ、社員一人ひとりが能力や個性を十分に発揮できる環境を整えることを目指し、がん対策を健康経営の柱の一つとして推進している。
全国450以上の検診機関からの選択や、健康保健組合と会社からの補助の実施など、がん検診の環境を整備。専門の保健師による相談体制や、治療と仕事の両立支援も進めている。
この取り組みは、当社の人事担当、産業保健スタッフ、健保組合が一体となり推進している。
2.浅野製版所(新佐絵吏事業開発部長)
当社は従業員35人規模の企業だ。過去にワークライフバランス制度を導入し失敗した経験を生かし、まずは社内の現状把握と健康課題の抽出を行い、健康経営を推進できる「土壌づくり」を進めた。そのうえで業務見直しによる効率化と「相談がマイナスにならない組織づくり」などを実践したことが奏功した。
現在では、健康経営の取り組みが人材の確保や定着にも貢献しており、事業継続に不可欠な取り組みとなっている。
3.ニチレイ(酒井麻路人財開発部ウェルビーイング経営推進室長)
当社では「働きがいの向上は従業員の健康がベースにある」との考え方のもと、経営課題として従業員の健康増進を推進してきた。
2016年に、ヘルスリテラシー向上のための従業員の自律的行動を促す健康支援プログラム「ニチレイ健康塾」を開始した。
現在は、健康塾のノウハウを取引先などに展開。その背景には、サプライチェーンの健康増進が安全や品質、安定供給の確保につながり、その結果、企業価値向上に貢献するという考え方がある。
4.明治安田生命保険(林孝之営業企画部営業企画室長〈当時〉)
当社では従業員向けにウォーキングなどの運動習慣の支援などに取り組んできた結果、独自指標である「健活年齢」が着実に改善してきた。
こうした社内の取り組みを、地域の健康増進のサポートにも生かしている。全国の自治体と連携し、3万7000人の営業職員が、地域住民に、健康等に関連した行政情報を案内するほか、健康チェックなどの各種健康イベントを展開している。19年以降、このイベントの参加者は累計857万人に上る。
【経済政策本部】
