神保氏
経団連は3月25日、東京・大手町の経団連会館で審議員懇談会を開催した。筒井義信会長、冨田哲郎審議員会議長をはじめ、審議員ら約200人が参加。慶應義塾大学総合政策学部の神保謙教授から「世界秩序の潮流変化と日本の外交・安全保障政策」と題して講演を聴くとともに意見交換した。講演の概要は次のとおり。
■ 国際秩序のトレンド
2000年代初頭、ヒト・モノ・カネ・情報の国境を越えたつながりによる経済の相互依存が進展し、世界各国は平和裏に、自由で開かれた国際システムに統合されることが想定されていた。
しかし、経済の相互依存は必ずしも平和をもたらさず、10年代以降、力の不均衡から生じる力の空白が、軍事的侵攻を誘発するようになった。ロシアによるクリミア併合やウクライナ侵攻は、その象徴的な事例だ。
中国をはじめとする権威主義国は、国家主導で経済的プレゼンスを向上させており、世界各国が自由で開かれた国際システムに統合される想定も崩れた。国際秩序を規定するものがルールではなく力となり、現在は超大国以外にとって極めて厳しい時代に入っていると言えよう。
30年代以降は、新興国が一層台頭し、多元的な国際秩序になることが考えられる。こうしたトレンドのなかで、日本は防衛費を含めた国家安全保障戦略を検討しなければならない。
■ トランプ政権の外交
第1次トランプ政権下では「米国第一主義」「経済ナショナリズム」「力による平和」という三つの概念が相互にせめぎ合いながら、中国との競争に寄った形で米国外交が展開されていた。
第2次トランプ政権下では、この米国外交がディールを重視する方向に変容しつつある。
第一に、大陸国家志向になり、同心円状に自らの安全を確保しようとしている。これがドンロー主義にもつながる。
第二に、同盟国の「ただ乗り」を認めず、安全保障に係る相応の負担を要求するようになった。
第三に、世界における紛争をディールと捉え、作戦は勝ち筋が明確で短期的なものとし、米国にとってプラスであれば軍事介入も辞さない構えを見せている。
このように米国は、全域的な秩序維持から、優先順位型の選択的関与へと移行しつつある。
■ 東アジアの安保環境
中国の国防費が急速に拡大するなか、東アジアでも安全保障に関する緊張感が高まっている。限定的な衝突や部分封鎖等は、残念ながら現実的なシナリオだ。
分断が拡大し、輸出規制をはじめとする措置が取られることも慢性化している。そのため日本には、さまざまなリスクに対応できるレジリエンス確保に向けて、サプライチェーンの再構築等を含めた対応が求められている。
日本の安全保障には、米国の存在が不可欠だ。米国外交が変容するなか、日米同盟の健全性を引き続き確保するためにも、日本が米国の国益にどのように資するかについて、積極的な発信が求められる。
【総務本部】
