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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2026年4月23日 No.3727 フェーズフリーな防災対策 -平時でも非常時でも役立つ対策/社会全体で防災力を高める/危機管理・社会基盤強化委員会企画部会

佐藤氏

経団連は3月19日、東京・大手町の経団連会館で危機管理・社会基盤強化委員会企画部会(佐久間美奈子部会長〈当時〉)を開催した。

平時でも非常時でも役に立つ「フェーズフリー」という新たな概念を取り入れた防災対策の推進について、フェーズフリー協会の佐藤唯行代表理事から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ 提唱の背景

これまで人間は産業発展を通じて生活水準を向上させ、さまざまな社会課題を解決してきた。ただし災害は例外で、被害が繰り返されてきた。

従来の防災は、限られたリソースしか持っていない行政やボランティア等の活動に依存してきた。しかし、防災領域にはビジネスの力、すなわち企業活動による持続可能な価値提供の仕組みが不可欠だ。

従来の防災は、非常時にしか役に立たない製品やサービスのコスト負担を提案しており、その需要は後回しにされがちで、継続性に乏しい。

そのため多くの人が防災の必要性を認識していても、実際に備える行動に結びついていない。企業も事業化には二の足を踏んできた。「災害は防ぎたいが備えは進まない」。それならむしろ「備えられない」を前提とすべきだ。

そうした観点から、日常を豊かにする日用品と、非常時のための防災用品や備蓄品を分けないフェーズフリーの考え方に至った。

■ 基本的な考え方

フェーズフリーの製品・サービスは、利用者が意識せずとも、平時・非常時を問わず機能を発揮し、人命や生活を守ってくれる。

フェーズフリーの基本となる考え方は、「備えられない」ことを前提に、現実に災害で被害を受ける「備えられなかった人々」を対象とし、安心・安全を設計することだ。

この発想の転換は、「バリアフリー」「エコ」等といった概念と同様だ。それらの概念も単なる「解決策の提示」から「参加できる仕組み」の構築へと転換することで、社会全体への普及が進んだ。

■ 好事例

既存の商品・サービスの価値を高めつつ、非常時にも役立つ機能を組み込んだフェーズフリーの製品・サービスは、顧客に価値が伝わりやすく、受け入れられやすい。

例えば、ハイブリッド車は、平常時には燃費性能に優れ、経済性や環境性能の面で生活の質を向上させるものだが、発電・蓄電機能を活用すれば災害時には数日間分の電力供給源になる。

緊急時に車両の窓ガラスを割る脱出用ハンマーは安価で有用だが、日常生活での需要が乏しく、普及が進んでいない。そこで、日常的に使われるUSBカーチャージャー(シガーソケット接続充電器)にハンマーの機能を組み込むことで、多くの人に安全を届けている。

フェーズフリーの考え方は行政の取り組みでも有用だ。「災害に強いまちづくり」という特定領域とその予算だけで災害から命や生活を守るには限界がある。教育や福祉、交通等の広汎な日常施策にフェーズフリーを組み込むことで、社会全体の防災力を高めることができる。

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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