武井氏
経団連は4月8日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会企画部会(原田剛部会長)を開催した。
法務省が取りまとめた「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」に関する意見募集への対応を目的として、西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の武井一浩弁護士から、会社法改正について説明を聴くとともに意見交換した。武井氏の発言概要は次のとおり。
■ 日本経済の強靭化と成長投資の促進
現下の日本経済が抱える諸課題に的確に対応した法改正となることを期待したい。成長投資促進は2026年のガバナンスコード改訂に明記されている重要課題だ。
第一は株式交付制度の改正。株対価M&Aという海外企業が有している成長投資の選択肢を、日本企業にもイコールフッティングで解禁すべきだ。
子会社化後の株式の追加取得については制限なく対象とすべきだ。取得会社側の株式買取請求権も、株対価M&Aを行った会社に法が強制的にキャッシュアウトさせるという日本だけに見られる規律であり、廃止すべきだ。
第二は責任限定契約への業務執行役員の追加。バッド・フェイス(悪意)がない軽過失で業務執行役員が青天井の損害賠償責任を負う可能性がある国は日本くらいだ。
従業員への株式無償交付について、株主総会決議案(B案)は、人的資本投資という業務執行事項を新たに総会決議事項化するものであり、新株予約権交付を含め、取締役会決議で何の問題もなく行われてきた20年来の公的解釈と実務を特段の立法事実もなく覆す、重大な問題を含む改正案だ。
■ 経営環境の不確実性の高まりに伴う中長期目線の確保
サステナビリティ対応やデジタル対応、経済安全保障の要請からのサプライチェーン強靭化など、短期目線でなく中長期目線で取り組むべき経営事項や成長投資事項が増えている。
他方で日本では株主還元偏重で成長投資が増えていない。株主側のパッシブ化に伴う形式的議決権行使等の形式主義化によるショートターミズムの弊害が顕在化している。欧米でも中長期目線を要する人的資本投資や研究開発投資等が犠牲になり、社会分断や格差拡大等の一因として批判されている。
第一に実質株主確認制度を導入する必要がある。欧米がデフォルトで採用している機関投資家の見える化法制だ。現案には、海外投資家に効果が及ばない過料であるなど、いくつか問題点がある。
第二が株主総会関連の改正。総会プロセスの各種デジタル化は、若年層株主を含む日本社会と共生する株主の醸成に資する。バーチャルオンリー総会開催に常に定款規定を要するというのは過剰規制だ。
株主提案権の見直しは、投資単位引き下げの法的障害事由の改善となる。
会議体としての株主総会のあり方の改正は、昭和時代の硬い規律を見直して、総会当日を、出席した個人株主等に自社の成長の道筋等を示す場にするものである。
2項調査者制度も昭和時代の立法ミスであり、廃止する必要がある。法令定款違反事由もないのに、ボードからもマネジメントからもアンタッチャブルな者が会社に入り、フォレンジックをかけて内部情報にフルアクセスできる。経済安全保障の観点からも重大な懸念がある。
短期志向の投機的株主が他のステークホルダーの利害を犠牲にしてもうけられることも助長すべきでない。「非公開化の公開買い付けが公正といえるためにはMOM(マジョリティオブマイノリティ)が必須である」という改正案は断じて行うべきでない。
【経済基盤本部】
