ケル氏
経団連は3月25日、東京・大手町の経団連会館で、企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース(関正雄座長)を開催した。
国連グローバル・コンパクト創設時に事務局長を務め、企業のサステナビリティの取り組みを推進してきた、アラベスク・パートナーズのゲオルグ・ケル会長から、サステナビリティを巡る世界的潮流と企業に求められる対応について説明を聴き、意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 第2次世界大戦後のルールに基づく国際秩序
第2次世界大戦後、米国主導で、国際連合、世界銀行、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)等の国際機関が整備され、自由な貿易と投資を通じて経済発展と平和を実現する、ルールに基づく国際秩序が確立された。
冷戦終結後はイデオロギー闘争の時代が終了し、平和的協調の時代が到来したという楽観的な見方が席巻し、環境やジェンダー平等に関する国際会議が国連主導で相次いで開催され、市民社会や企業も積極的に参画した。
こうした流れのなか、1990年代後半に当時のコフィ・アナン国連事務総長のもとで「国連グローバル・コンパクト」が立ち上げられ、世界最大の企業サステナビリティ・イニシアティブへと発展した。
■ 国際秩序の揺らぎと各国・企業のサステナビリティの取り組みへの影響
近年、大国間競争の再燃や国内の分断、軍事化の加速等により、長年にわたって築かれてきたルールに基づく国際秩序がほころび、多国間協力が後退しつつある。ナショナリズムやポピュリズムの台頭は、サステナビリティ関連政策にも影響を及ぼしている。
特に米国では、政府によるサステナビリティ関連活動は全面的に行うことができなくなり、化石燃料への回帰も進んでいる。欧州もサステナビリティ開示要件を緩和するなど、全体として鈍化の傾向がみられる。
しかし、欧米の主要企業はサステナビリティへの取り組みを放棄したわけではない。取り組みが自社の強みになると理解している企業は、サステナビリティを経営戦略上の中核要素へと位置付けを進化させている。
■ 混沌とした時代における企業戦略
政治的要因がサステナビリティの取り組みを停滞させる一方で、自然、市場、技術という三つの構造的な力が取り組みを再び加速させることを示唆している。
気候変動による干ばつ、洪水、熱波といった自然の力は政治の力をしのぎ、社会に強い対応を迫る。
市場では、保険料の急騰や農産品価格の乱高下等、気候変動リスクが価格に反映されている。
技術面では、グリーンテクノロジーが急成長し、企業の投資のあり方や産業構造を再構築していく。
現代は政策とビジネスが複雑に交錯し、その中心に急速に進展する技術が存在する。こうした「混沌とした空白期」を乗り越えるため、企業には、(1)ボトムアップのレジリエンス強化(2)安全保障と結び付けたサステナビリティへの投資(3)信頼と倫理的な価値観の重視(4)志を共有する組織との協調(5)AIの活用によるサステナビリティの取り組みの加速――が求められる。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】
