経団連総合政策研究所(筒井義信会長)の韓国研究プロジェクト(研究主幹=深川由起子早稲田大学政治経済学術院教授)は3月26日、セミナー「経済安全保障時代における日本企業のリスクと日韓産業協力の展望」をオンラインで開催した。
経団連総研「技術と国際秩序」研究プロジェクト上席客員研究委員の鈴木一人東京大学公共政策大学院教授と深川研究主幹がそれぞれ講演した後、両氏による対談を行った。概要は次のとおり。
■ 経済安全保障時代における日本企業のリスク(鈴木氏)
グローバル化の進展により各国の相互依存が深まるなか、経済関係が政治的圧力の手段として「武器化」される時代に入った。そして世界貿易機関(WTO)の機能不全や主要国の政策転換により、ルールに基づく秩序から力による秩序への移行が進んでいる。
こうした環境下で重要となるのが、他国への過度な依存を回避する「戦略的自律性」と、サプライチェーン上で不可欠な地位を確保する「戦略的不可欠性」だ。特にレアアースや半導体製造装置など、上流工程における独占的地位が国家のパワーとなる。
日本企業にとっては、中国依存や台湾有事、海上交通路の遮断などに起因するサプライチェーンリスクに加え、米国の関税政策やEUの規制といった市場面のリスクが拡大している。これらに対しては、供給網の多元化や備蓄、内製化などの対応が求められるが、コストとのバランスを踏まえた経営判断が不可欠だ。
■ 日韓の経済安全保障の違いと産業協力(深川研究主幹)
日本と韓国は共に世界と密接につながった経済構造であり、中国の製造業の影響を強く受けるため、リスク認識が極めて近い。少子高齢化や成長率の低下といった国内課題も共通しており、環境、経済、地政学、技術が複合的に絡み合うリスク環境に直面している。
両国はそれぞれ経済安全保障体制の整備を進めており、日本は外為法や経済安全保障推進法を軸に制度構築を進め、韓国は供給網関連法制や早期警報システムの導入などにより対応を強化している。
資源・エネルギー、食料安全保障、サプライチェーン強靭化などは明確な共通利害であり、情報共有や共同備蓄、共同開発などで協力の余地が大きい。一方で、制度面の未整備や相互認識のずれといった課題も残っており、ここの調整を図ることが両国の信頼関係構築につながる。
■ 対談、質疑応答
経済安全保障上の具体的対応として、レアアースなど重要資源の備蓄や代替供給網の構築の必要性が指摘された一方、それに伴うコスト負担のあり方が大きな課題との認識で一致した。
日韓間は、競争関係にある分野も多く存在するが、資源・エネルギーや供給網分野については共通課題克服のための協力という発想での連携可能性が考えられるとの指摘があった。
台湾有事と朝鮮半島有事が同時に発生する可能性についても議論が行われ、現状の制度や関係を踏まえると日韓の軍事的共同対応には制約が大きいとした。
最後に米中関係について、資源や製造を握る中国と市場や先端技術を持つ米国との間では相互依存が均衡し、一定の安定が保たれているが、関税や供給制約の影響が最終的に消費者負担として顕在化するなど、持続可能性に課題があるとの指摘があった。
