経団連は5月19日、「裁量労働制の拡充を求める~柔軟で自律的な働き方をより広げるために」を公表した。政府内で裁量労働制の見直しの議論が進められていることを受け、経団連が求める内容を提言したもの。概要は次のとおり。
■ 拡充の必要性
日本全体の労働生産性を高めるためには、マクロの観点から成長産業や分野等への労働移動を促進すると同時に、ミクロの観点から働き手一人ひとりのアウトプットの質を最大化することが必要だ。
経営環境が変化し、労働者の就労ニーズも多様化したなか、労働者が柔軟で自律的に働ける環境を整備するために「労働時間をベースとしない処遇」を可能とする、裁量労働制の拡充は不可欠だ。
厚生労働省の「裁量労働制実態調査」(2019年)では、裁量労働制適用労働者の約8割が適用に満足している。東京大学の川口大司教授はこの調査結果について、「適用労働者の方が非適用労働者と比べて健康状態がよいと答える傾向がある」と分析している。
経団連が実施した、ホワイトカラーの労働者約1000人から回答を得た調査では、裁量労働制の適用を希望する労働者は33%に上った。
裁量労働制を適用している企業の労働者からは、生産性が向上したという声も聞かれる。
■ 拡充に向けて
現在の裁量労働制は、非対象業務が少しでも含まれると適用が認められず、活用がほとんど広がっていない。会員企業へのアンケートやヒアリングの結果を踏まえ、次の3業務(図表参照)を裁量労働制の対象に追加することを求める。
(図表のクリックで拡大表示)
1.対象とならない業務が一部混在する業務
裁量労働制の対象業務をメインとしている労働者が、例えば新システムの導入プロジェクトなどにも携わる場合、システム保守などの裁量がない業務を一部行う場合も裁量労働制の適用を求める。
2.課題解決型提案業務
顧客の課題を調査・分析し、そのソリューションとなる商品やサービスを企画・開発し、提案する業務が挙げられる。業務の大半が企画等に従事する場合に限り適用することを求めているものであり、例えば商品販売のみを行う営業所で働く労働者は含まれない。
3.シェアードサービス業務
シェアードサービス(注)を行う会社で、グループ会社の人事や経営に関する企画、立案、調査、分析を行う業務も対象業務とすべきだ。
■ 拡充のあり方
裁量労働制は、適正に運用されれば、労使双方にメリットのある制度だ。一方で、制度趣旨に沿わない運用がなされれば、健康面や処遇面で問題が生じ得るとの指摘もある。
裁量労働制の拡充に当たっては、過半数労働組合がある企業での導入事例を参考に、長時間労働の防止や処遇確保の濫用防止策を組み込んだ見直しを行うべきだ。
経団連は労働者側と建設的に議論し、適正な運用と制度の普及に一層取り組んでいく。
(注)グループ会社や複数の企業で重複する間接業務について、企画・立案業務などを集約・標準化し、効率化を目指す仕組み
【労働法制本部】
