経団連(筒井義信会長)は5月19日、提言「科学技術立国戦略」を公表した。
経団連は2024年12月に公表した中長期ビジョン「FUTURE DESIGN 2040」(FD2040)で、目指す国家像の一つに「科学技術立国」を掲げた。その具体化に向け、25年5月に科学技術立国戦略特別委員会(澤田純委員長)を設置し、1年間にわたり検討を重ねてきた。
提言の概要は次のとおり。
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■ 提言の位置付け
わが国は、人口減少・少子高齢化、資源制約などの構造的課題に直面しており、国際社会でも、価値観や規範を巡る対立・分断が深まっている。
こうしたなか、科学技術を国家戦略の中核に据え、研究開発投資を起点とする「成長と分配の好循環」を実現するとともに、科学技術の力で多様な価値を創出し提供する「価値多層社会」を構築し、国際社会から信頼され、必要とされる国を目指すことが不可欠だ。
提言は、教育から科学研究、技術開発、社会実装、産業競争力強化までを一気通貫で捉え、40年を見据えた中長期的な国家戦略として打ち出した。
■ 基本的な考え方
第一に、従来の「コストカット型」から「投資牽引型経済」へと国全体のマインドセットを転換し、研究開発、設備、人的資本への投資を拡大すること。
第二に、科学技術そのものの振興に加え、その成果を受け止め、社会に実装する「産業・社会」と、AI時代において科学技術に意味と方向性を与える「思想・哲学」を含めた総合設計が必要であること。
第三に、研究者の自律性を尊重し、長期的・安定的な支援を要する科学研究と、社会実装や国際競争を見据えた戦略的・集中的投資を要する技術開発の違いを、産学官で共有すること――の重要性を強調した。
■ 主要な改革
官民合わせた研究開発投資を対GDP比5%、40年に年間50兆円規模へと引き上げることを提言した。
基礎研究から社会実装まで切れ目なく政策を推進する体制を構築するため、「科学技術省」の設置を求めた。
研究開発と社会実装の間にある「死の谷」を乗り越えるには、人材流動性の向上が不可欠だとし、大学・研究機関と企業の関係を、従来の「産学連携」から、人材、資金、知、設備が双方向に行き交う「産学融合」へと発展させる必要性を指摘した。
AIをはじめとする先端技術が経済社会のあり方を大きく変えるなか、人間と技術が相互に作用するという視点に立ち、自然科学に加え、人文・社会科学の基盤強化にも取り組むべきだとした。
経団連は今後、研究開発投資を起点とした価値創出、社会実装、国際展開を通じ、「投資牽引型経済」への転換と「価値多層社会」の実現に向けて先導的役割を果たしていく。
【産業技術本部】
