田中氏
経団連は4月21日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会(亀澤宏規委員長、奥田健太郎委員長)を開催した。
法務省が「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」を取りまとめたことを受けて、意見募集に対応するため、東京大学社会科学研究所の田中亘教授から会社法改正に向けた論点について説明を聴き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ 株式無償交付
現行の会社法では、上場会社は取締役または執行役に対して株式を無償交付できる。一方、使用人等は対象に含まれていないため、現物出資構成で株式を無償交付しているが、手続きが複雑だ。そこで上場会社の使用人等を株式無償交付の対象に含めることが検討されている。
中間試案では、株主総会決議を不要としつつ有利発行規制に服するA案と、株主総会決議を必要とする一方で有利発行規制には服さないB案が示されている。
実務において特段の問題が生じていないため、B案のように株主総会決議による承認を求める必要はなく、A案のように取締役会決議で足りるとの考え方もある。ただし、A案が統一見解といえるかについては疑問があり、A案とB案の併用案も示されている。
■ 株式交付制度
株式対価によるM&Aで利用される株式交付制度について、対象範囲の拡大と手続き規制の緩和が検討されている。
中間試案では、対象範囲の拡大の方向性として、子会社株式の追加取得を一般的に含める案と制限付きで認める案が示されているが、いずれでも対象範囲は拡大する。実質的に子会社化する場合や外国会社の子会社化も対象に含める案が示されている。
手続き規制の緩和としては、株式交付親会社が株式以外の財産を対価とする場合の債権者保護手続きの廃止が示されている。これは株式交換にも適用されるため、実現すれば大きな法改正と評価できる。
■ バーチャル株主総会
現在、バーチャルオンリー株主総会は産業競争力強化法に基づき、一定の要件を満たした上場会社のみ開催が可能だが、会社法上の制度として全ての会社を対象とすることが検討されている。
中間試案では、バーチャルオンリー株主総会開催のための実施要件として、定款の定めを求めるとともに、通信記録の作成・保存義務などが示されており、バーチャルオンリー総会における質問の取り扱いに関する投資家の警戒感を反映している。
通信障害が発生した場合については、会社に故意または重大な過失がある場合や、決議に影響を及ぼす場合に限り、株主総会決議取消しの対象となる「セーフハーバールール」が示されている。なお、決議方法の法令・定款違反と評価されるには、通信障害が会社側の事情によることが前提になると考えられる。
■ 実質株主確認制度
実質株主確認制度は、株式会社から実質株主を確認する制度と、株主側から株式会社に対する通知を義務付ける制度の二つから成る。
前者は、株式会社が仲介機関である名義株主に対し、指図権者に関する情報提供を請求できるものだ。中間試案では、違反の場合は故意または重過失がある場合に限り過料の制裁が科される案が示されている。議決権停止を認めるべきという意見には、投資家などからの反対が強く、慎重な立場が採られている。
後者は、金融商品取引法の大量保有報告制度の違反者に対し、株式会社が議決権停止の通知をすれば、一定期間経過後に議決権が停止される制度だ。この制度については議論が十分とは言えず、今後、詳細を詰める必要がある。
【経済基盤本部】
