経団連は5月19日、「防衛生産・技術基盤の抜本的強化に向けて」を公表した。
安全保障環境が厳しさと複雑さを増すなか、防衛事業は多くの課題を抱えている。そこで、防衛生産・技術基盤の中長期的な維持・強化には民間企業の自助努力による発展が重要との認識を示したうえで、政府が取り組むべき施策を提言した(図表参照)。概要は次のとおり。
■ 戦略的な予算、制度、施策の確立
防衛事業を取り巻く国際情勢の緊迫化、物価・為替変動、サプライチェーン制約等のなか、民間企業が予見可能性をもって投資を継続できるよう、戦略策定、予算確保、制度設計を一体的に進める必要がある。
防衛装備品のライフサイクルや調達品目・数量等を明示し、必要かつ十分な予算を複数年度で継続的に確保し、拡大すべきだ。
利益率やキャッシュフローの改善による経営基盤の強化、物価、為替、金利等による変動を支払い額に柔軟に反映できるレジリエントな仕組みを制度的に整備し、拡充することが求められる。
契約、調達手続きの電子化と標準化、装備と部品の共通化等により、調達のさらなる効率化と迅速化も図るべきだ。
■ 国内生産の官民連携体制の構築
世界の安全保障環境の緊迫化に伴う防衛需要の増大に備え、官民連携のもとで国内生産体制を強化する必要がある。
政府は、装備品や部材・原材料の国内調達を優先する方針を明確化し、国産化の対象や優先順位を示すべきだ。
緊急事態の長期化に対応できるよう、平時から国内生産余力の確保と運用効率の向上を図り、特に火薬・弾薬等の消耗品に関して生産基盤強化や備蓄等を進めるべきだ。
装備品生産に不可欠な重要鉱物等の安定供給確保、官民が機微情報および事業性判断に必要な情報を適切に共有できるセキュアな情報共有基盤の整備等も重要だ。
■ 人、設備、技術への投資と産学官連携の促進
防衛生産のための技術基盤の持続性を確保していくには、人材、設備、技術への投資拡大と産学官連携の促進が不可欠だ。
政府には、企業による人材採用と育成を促すインセンティブ設計、官民の人的交流、防衛省・自衛隊等の人的基盤強化が求められる。新規投資だけでなく、設備の維持・更新、建屋等の老朽化対応を含めた生産基盤強化も支援すべきだ。
サイバー、宇宙、AI、無人アセット等の先端技術の研究や活用促進に当たっては、防衛と民生の好循環を図ることが望まれる。その際、スタートアップの育成やさらなる活用も選択肢の一つだ。
■ 国家戦略としての防衛装備移転、国際共同開発の加速
同盟国・同志国への適切な防衛装備移転は、地域の平和と安定に資するとともに、供給先の拡大を通じて、わが国の防衛力そのものである防衛生産のための技術基盤の強化にも寄与する。
今般、いわゆる「5類型」が撤廃され、原則全ての完成品が輸出可能となったものの、オフセット要求や、維持・整備、契約条件など、企業単独では対応が困難な課題も多い。
装備移転に関する政府の司令塔整備や、移転を前提とした国内装備品の開発等を検討すべきだ。
【産業技術本部】
