ガイエット氏
経団連のウクライナ経済復興特別委員会(國分文也委員長)は5月19日、東京・大手町の経団連会館で、欧州復興開発銀行(EBRD)のグレッグ・ガイエット第一副総裁との懇談会を開催した。ウクライナや中央アジアでのEBRDの活動を中心に説明を聴き、意見交換を行った。説明の概要は次のとおり。
■ EBRDの概要
EBRDは多国間開発銀行であり、民間セクターの発展を中核的な目的としている。業務の75%は支援対象国の民間企業向けであり、機能的かつ持続可能な市場経済の構築の支援を責務としている。
冷戦後の中東欧の市場移行支援を目的に設立された後、地中海地域、北アフリカ、中東から、サブサハラ・アフリカやイラクへと対象を拡大した。
340億ユーロの資本基盤とAAA格付けにより、低コストで安定的な投融資を提供できる点が強みだ。政策に対する助言業務を組み合わせることで、支援対象国のシステム全体の移行を促している。
1991年以降の累計投資額は2200億ユーロに達し、2025年には168億ユーロを投資した。特に近年は、エネルギー価格高騰や地政学リスクを踏まえ、エネルギー移行支援を重視している。
■ ウクライナでの実績
EBRDは1992年からウクライナで業務を行っており、ロシアによる全面侵攻後も活動を止めず、むしろ規模を拡大してきた。
戦時下では「明かりを守り、暖房を維持し、人々の暮らしを支える」ことを最優先に、侵攻以降、ウクライナ最大の機関投資家として約100億ユーロを投じた。2025年だけでも23億ユーロを投資している。
重点分野はエネルギー安全保障であり、破壊されたインフラの再建、暖房維持のためのガス購入支援、送電網の修復・強靭化を進めている。太陽光・風力発電、蓄電池など、ロシアからの攻撃に強い分散型再生可能エネルギーへの投資も促している。
交通面では鉄道網支援に取り組み、人・物の移動を支えている。
復興においては単なる原状回復ではなく「より良く再建する」ことを掲げ、エネルギーシステムの近代化、戦時中に生まれたドローン等の技術革新の商業化、国際企業が投資しやすいガバナンス、法制度、資本市場の整備を進めている。
ウクライナはEU加盟を目指しており、EUとの自由貿易協定も締結している。将来的にはEU市場向けの非常に費用対効果が高い製造拠点となる可能性がある。
■ 中央アジアでの実績
中央アジアとモンゴルは、EBRDが1992年以降取り組んできた重要地域だ。この地域全体で約240人の職員を配置し、累積投資額は220億ユーロに上る。
各国が市場経済への移行過程にあることから、中小企業・零細企業支援を重視しつつ、エネルギーシステムを高度化し、重要鉱物の付加価値を高めるための精錬と生産の能力開発にも注力している。
再エネでは、太陽光・風力発電、蓄電池を含む案件で日本企業との関係がある。
重要鉱物については採掘にとどまらず、精錬・加工を含む上流から下流まで一体となったサプライチェーンを構築することが不可欠であり、EBRDは地質情報のデジタル化や投融資を活用した下流加工能力の開発を支援している。
【国際経済本部】
