経団連は5月26~27日、小坂達朗バイオエコノミー委員長(当時)と岩田圭一同委員長を団長とする総勢26人の視察団を神戸・大阪に派遣した。
政府から認定を受けた「バイオコミュニティ関西」(BiocK)を訪問し、バイオものづくり、再生医療、フードテック等の最新の取り組み状況を調査した。概要は次のとおり。
■ バイオものづくり
神戸大学は、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)のもと、バイオものづくりを中心に、基礎研究と社会実装を両輪としてイノベーションを創出する拠点形成を進めている。
2025年10月に開所したバイオものづくり研究棟では、個々の研究者の知見を結び付け、ビジネスモデルの策定からスタートアップ創業に至るプロセスを大学主導で構築する「グローバル・イノベーション・カタパルト」を展開している。その実装基盤として、AIやロボティクスを活用したバイオファウンドリを整備している。
日揮ホールディングスでは、世界初となるガス循環発酵技術の基盤設備を導入したバイオプロセス研究所(26年1月竣工)を視察した。
CO2を原料としたガス発酵プロセスの実証現場では、5~200リットル規模まで段階的なスケールアップ検証が可能だ。30年ごろの準商業プラント稼働を見据え、バイオものづくりの社会実装に向けて着実に開発が進められている。
島津製作所のバイオものづくり神戸事業所(25年3月開所)は、ガス発酵による微生物培養から、分析・解析までを一気通貫で実施できる環境を整備している。
多検体培養装置や培養液の自動サンプリング技術により、有用微生物の開発期間を従来の10分の1に短縮するシステムの構築を加速させており、計測・分析技術の高度化が開発効率を大きく引き上げている様子がうかがえた。
■ 再生医療・細胞医療
再生医療等製品の開発・製造受託(CDMO)事業会社であるS-RACMO(住友化学と住友ファーマによる合弁会社)は、世界で初めて製造販売承認を取得したiPS細胞由来の再生医療等製品の製造を担うなど、再生医療の産業化を牽引している。
視察した商用生産施設「SMaRT」では、高度な無菌環境を維持する独立した製造区画を備え、細胞医薬品の品質管理に対応した製造体制が構築されていることを確認した。
中之島クロスは再生医療の産業化を推進する拠点であり、研究開発から製造、事業化までをつなぐエコシステムの構築が進められている。
この拠点に入居するセラファ・バイオサイエンス(アステラス製薬と安川電機による合弁会社)は、創薬の知見とAI・ロボティクスを融合した事業を展開している。
同社の双腕ロボット「まほろ」は、ピペットや顕微鏡、遠心分離機等の機器を扱える柔軟性と、熟練者の手技を高い精度で再現できる点が特徴だ。再現性が高く、実験プロセスを継続的に実施できる環境が整備されていることがうかがえた。
■ フードテック
大阪大学の松﨑典弥教授は、組織工学と3Dバイオプリント技術を核に、「培養肉未来創造コンソーシアム」を通じて、霜降り培養肉の開発と社会実装を推進している。
現状、細胞の拡大培養に約1週間、分化誘導に約2週間を要する。その後、得られた筋肉細胞や脂肪細胞などを3Dプリント技術により立体的に組み上げることで、実際の食肉に近い構造を再現できる点が特徴だ。
脂肪と筋肉の比率を調整することで、味や栄養特性を設計した培養肉の開発も可能だ。自動製造技術の開発や量産化に向けた取り組みも進められており、持続可能な次世代食料供給システムの構築が期待される。
■ BiocK
産学が集結するBiocKでは、オープンイノベーションを通じた新産業創出に取り組むとともに、合成生物学や再生医療などの強みを結集し、バイオものづくりに関する需要喚起や市場形成を進めている。
こうした取り組みを支える基盤には依然として課題が残されている。
(1)バイオものづくり等の市場形成が遅れている(2)コミュニティ運営がボランティアベースに依存している(3)産学官をつなぐコーディネーターの確保に必要な財源等が不足している(4)施設整備などのハードに比べて運用面を担うソフトへの支援が十分でない――といった指摘がある。
視察では、こうした運用基盤の強化の重要性を再認識した。
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今回得た知見は、日本におけるバイオエコノミーの確立とバイオトランスフォーメーション(BX)の実現に資するものだ。広く会員に共有し、政策提言などの委員会活動に生かしていく。
【産業技術本部】
