安藤部会長
経団連は6月1日から12日にかけてスイス・ジュネーブで開催された第114回国際労働機関(ILO)総会に、日本使用者代表団を派遣した。
総会にはILOに加盟する187カ国から政労使の代表が参加。日本からは、長坂康正厚生労働副大臣、安藤嘉規経団連労働法規委員会国際労働部会長、神保政史日本労働組合総連合会(連合)事務局長が政労使の代表として出席した。概要は次のとおり。
■ 安藤部会長が演説
5日の代表演説で安藤部会長は、2026年のILO事務局長報告のテーマを、AIが雇用に与える影響としたことは時宜を得たものだと評価した。
日本は「人間中心のAI社会原則」のもと、新技術を活用して経済成長と世界の繁栄を目指すとともに、労働者との対話を通じて、AIの可能性とリスクを正しく理解し、責任を持って活用していくことが重要だと強調した。
AIには差別や不平等の助長、プライバシーへの影響などの懸念がある一方、技術は急速に進歩しており、働き方や雇用への影響を正確に予測することは困難だと指摘した。
法的強制力のある画一的な国際労働基準を設ければ、かえって各国間の技術格差やデジタル格差を拡大させる懸念があるとして、ILOには好事例の共有や技術協力、能力構築を通じた、自主性を重んじた実践的なアプローチを期待すると述べた。
■ 第193号条約採択
25年の総会に続き、プラットフォーム経済に関する第2次基準設定の討議が行われ、「プラットフォーム経済におけるディーセント・ワークに関する条約」(第193号条約)が採択された。
投票結果は賛成406票、反対8票、棄権36票で、日本は政労使ともに賛成票を投じた。
条約を補足する勧告案は、十分な審議時間を確保できず採択には至らなかった。勧告の今後の取り扱いは26年11月のILO理事会で検討される予定。
第193号条約は、急速に拡大するプラットフォーム経済に関する初の国際労働基準だ。
討議の結果、労働安全衛生、報酬および支払い、自動化システムの影響などについての基準を定め、各国の法制度や国内事情を尊重した原則ベースの内容となった。最大の争点は、デジタルプラットフォーム就業者の雇用上の地位の分類だった。
労働側は、一定の場合に雇用関係を推定する仕組みの導入を求めた。使用者側は、就業者の法的地位は各国の法制度・慣行に委ねられるべきで、雇用関係、自営業その他の法的区分を認めるべきだと主張した。
最終的に、単一の国際モデルを義務付ける内容とはならず、各国制度による判断の余地が維持された。
条約前文には、プラットフォーム労働の課題だけでなく、インフォーマル経済からフォーマル経済への移行への貢献など、その積極的な側面も盛り込まれた。
自動化された意思決定システムに関する規定についても、情報アクセスの対象を本人に限定するとともに「人間による審査」を義務付ける表現を見直すなど、使用者側の主張が反映された。
この他、ジェンダー平等に関する一般討議では、ジェンダー平等を社会的課題としてだけでなく、生産性やイノベーション、企業競争力、経済成長にも資するものと位置付けるなど、バランスの取れた結論を採択。
社会対話と三者構成主義に関する周期的討議では、団体交渉に加え、協議や職場協力など幅広い社会対話の重要性が明確化されるなど、日本の労使協議の考え方とも整合的な内容の結論を採択した。
【労働法制本部】
