古田氏
経団連と経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は6月22日、経団連会員企業を対象に「生物多様性に関わる基礎講座」をオンラインで共催した。
この講座は、生物多様性と企業活動との関係への理解を深めるとともに、2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)に向けた機運醸成を図ることを目的とする。26年度中に全5回シリーズで実施する予定で、今回はその第1回。
国際自然保護連合(IUCN)日本リエゾンオフィスでコーディネーターを務める、大正大学情報科学部グリーンデジタル情報学科の古田尚也教授から「生物多様性・自然資本についての基礎知識」をテーマに説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 生物多様性と企業
近年、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)や昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)のターゲット15(注)を背景に、企業による生物多様性への取り組みが一層重視されている。
カーボンニュートラル(CN)とネイチャーポジティブ(NP)は車の両輪であり、切り離せない課題だ。これまでコストと見なされていた自然保護が、企業の存続を左右する「投資」および「必須条件」へと変わりつつある。
生物多様性は、企業活動が依存する自然資本や生態系サービスの基盤であり、経営の前提条件として意識する必要がある。
企業には、自社の事業活動が自然にどのように依存し、どのような影響を与えているのかを把握し、リスク管理(守りの視点)と事業機会(攻めの視点)の両面から生物多様性と自然資本の保全に取り組むことが求められる。
■ 自然資本と危機
生物多様性を企業にとって理解しやすい概念として捉えるため、自然をストック、生態系サービスをそこから生み出されるフローと見なす「自然資本」という考え方がある。
食料・水・原材料の供給、気候や水循環の調整、文化的価値、生命の土台となる土壌形成や光合成は、いずれも企業活動や社会経済の基盤だ。
一方で、プラネタリーバウンダリー(地球の限界)の観点からは、生物多様性はすでに限界を超えて劣化している。生物多様性の喪失や生態系サービスの劣化は、農作物の不作、原材料の枯渇、水不足や洪水などによる工場の操業停止に直結し、サプライチェーンの寸断を招きかねない。
■ 保全アプローチ
生物多様性保全の考え方は、絶滅危惧種対策など「種」のレベルの保護から、生息地の保全など「生態系」レベルの保全へと発展してきた。
近年はスコープの拡大と統合が進み、社会経済活動と自然環境を一体的に捉える「ランドスケープアプローチ」が重視されている。具体的には、保護地域以外で生物多様性保全に資する地域(OECM)が挙げられる。
IUCNのレッドリストや生態系レッドリスト(RLE)は、こうした保全の優先順位やリスク把握に資する科学的基盤と位置付けられている。
■ 保全に取り組む意義
企業が生物多様性に取り組む意義は、(1)リスク管理(守りの視点)にとどまらず、(2)市場拡大(持続可能な製品・認証製品への需要増加)(3)イノベーション(バイオミミクリー〈生物模倣〉や自然を活用した解決策〈NbS〉を活用したインフラ開発)(4)レジリエンス向上(災害からの回復力強化)(5)人材獲得(環境意識の高い若手人材)――といった事業機会(攻めの視点)もある。
自然領域への投資は短期的にはコストと見られやすいが、中長期的には企業価値の向上や社会からの信頼につながる。
今後は、OECMや自然共生サイト、国際的なツールなども活用しながら、国内外のステークホルダーに対して取り組みを分かりやすく示していくことが重要だ。
(注)企業(特に大企業・多国籍企業、金融機関)に対し、事業活動やサプライチェーン、バリューチェーン等における生物多様性へのリスク・依存・影響を定期的に評価・開示することを促し、負の影響の低減、正の影響の拡大、持続可能な生産の推進を目指す、GBFの重要目標の一つ
【教育・自然保護本部】
