経団連は7月7日、東京・大手町の経団連会館で、アジア・大洋州地域委員会(佐藤恒治委員長、原典之委員長)を開催した。
外務省の宮本新吾南部アジア部長、経済産業省の羽田由美子アジア大洋州課長から、最近の東南アジア、南アジアの政治経済情勢について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 外務省
宮本氏
1.日本との関係
東南アジア、南アジア各国では、指導者の世代交代が進んでいる。シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所による2026年の調査では、ASEANの日本に対する信頼度は、米中と比べて突出して高い。
しかし、新世代の対日観は前世代と異なり、日本の相対的な経済力が変化するなか、選択肢は日本だけではなくなっている。
ASEANとの貿易額は、米中との間では増加しているのに対し、日本とは横ばいで推移しており、日本のシェアは低下している。インドとの関係でも同様の傾向が見られる。
米国の第1次トランプ政権以降、米中貿易摩擦の影響などにより、多くの日本企業が生産拠点を中国から東南アジアに移転した。一方、日本からインドへの生産機能の移管は比較的少ない。
多くの日本企業がインドでの事業拡大に意欲を示しているが、実際の行動には必ずしも結び付いていない。このギャップをいかに埋めるかが課題だ。
日本は長年にわたり、東南アジア、南アジア地域で、インフラ開発を進め、人材育成のためにハード・ソフト両面で政府開発援助(ODA)を実施し、地域の繁栄と安定に貢献してきた。日本企業の進出にも寄与した。
2.高市首相の訪印
高市早苗内閣総理大臣は7月初めにインドを訪問し、日印首脳会談を行った。
高市首相とナレンドラ・モディ首相は、(1)25年に掲げた対印民間投資を10兆円にする目標のうち、すでに2兆円規模の投資が行われたこと(2)今回の訪問に150社以上の日本企業関係者が参加し、129件の協力文書が発表されたこと──などで示された両国の経済関係の深化を歓迎した。
■ 経産省
羽田氏
1.ASEAN情勢
ASEANは若年人口が多い地域との印象を持たれがちだが、年齢中央値はタイで41歳、インドネシアで35歳まで上昇するなど、転換点を迎えている。
今後、日本が経験してきた社会課題に直面すると見込まれており、日本にとって、ビジネス面のみならず社会課題への対応も含め、協力の余地が大きい。
ASEANの名目GDPは25年時点で、米国、中国、EUに次ぎ、インド(4兆3400億ドル)に匹敵する規模に成長している。
23年の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で打ち出された「共創」の理念のとおり、分野によっては日本が学び、ASEANが牽引する新たな経済協力関係が構築できるのではないか。
2.日本の取り組み
近年、一部の国の過剰供給能力や重要資源の偏在を背景に、特定の供給源に過度に依存する構造が形成されている。
ホルムズ海峡を通過する原油の約9割はアジア向けであり、多くのアジア諸国は備蓄量が限られている。このため、海峡の航行停止で最も影響を受けるのはアジアだ。
経産省は、こうした課題への対応を進めていく。
26年4月には、アジア・エネルギー・資源供給力強靭化パートナーシップ(パワー・アジア)を立ち上げた。ベトナムの製油所による第三国からの原油調達に対し、日本貿易保険(NEXI)を通じた金融支援が決定するなど、成果が表れ始めている。
日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)の見直しに向けた議論も進めていく。具体的な検討に当たっては、経済界にも協力いただきたい。
【国際協力本部】
